2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of physicochemical behavior between metal particles and cells in culture medium and development of sustained-release control method
Project/Area Number |
21K04759
|
Research Institution | Osaka Prefecture University College of Technology |
Principal Investigator |
倉橋 健介 大阪府立大学工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60516821)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 丈靖 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70274503)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ナノ粒子 / 表面修飾 / 溶解性制御 / 養液栽培 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属酸化物ナノ粒子の凝集性・溶解性を制御する手法として、シリカコーティングに着目し、金属アルコキシドであるオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を用いたゾルゲル法によりコーティング粒子の調製を行った。 反応後のZnOナノ粒子に対し透過電子顕微鏡観察を行ったところ、粒子周辺に均一なシリカのアモルファス層が形成されることが確認された。観察画像から膜厚を測定したところ、膜厚は反応に用いたTEOS濃度と反応時間に応じて変化し、5~30nmの異なる膜厚の粒子を得ることが出来た。また、得られた粒子の水への溶解速度を測定したところ、シリカ層形成により溶解速度が最大となる時間が遅くなるとともに、最大溶解速度もコーティング膜厚が6nmから24nmと増加するに伴い0.22(mg/L)/hから0.1(mg/L)/hまで減少することがわかった。以上の結果から、比較的簡便な合成手法によって膜厚を制御し、ナノ粒子の溶解性を調整できることがわかった。 得られたコーティングZnOナノ粒子を藻類に投与し暴露試験を行ったところ、ZnOナノ粒子を暴露しない場合や、コーティングなしのZnOナノ粒子を暴露した場合より、コーティング粒子を暴露した場合に細胞数が増加することがわかった。また、膜厚に対する細胞数は5~30nmの範囲で極大を持ち、細胞成長に対する最適な溶解速度が存在することがわかった。 上記の実験と並行して、Zn以外のミネラルをナノ粒子として褐虫藻に投与し、細胞増殖数への影響を観察した。その結果、Zn以外にもCaなどの幾つかのミネラルにおいて、溶液状態よりナノ粒子として投与した場合の方に細胞数が増加することがわかった。Caについては、ゾルゲル法によってシリカコーティングを行い暴露したところ、ZnOと同様にコーティングを行わない粒子よりも細胞数が増加する結果が得られ、ミネラル吸収一般へ応用できる可能性を見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、金属ナノ粒子の局所的な凝集・溶解挙動を理解することで、植物細胞への吸収速度を制御できる徐放性ナノ粒子を造粒することである。 初年度においては、金属ナノ粒子の溶解性制御の手法として表面修飾に着目し、TEOS濃度や反応時間など比較的簡便な合成条件の変更によって、シリカコーティングの膜厚を制御できることを明らかにした。シリカ膜厚の異なる金属ナノ粒子の溶解速度を測定したところ膜厚との相関関係が得られ、溶解性を制御した金属ナノ粒子を実験室レベルで調製する体制を確立した。 また、調製したコーティングナノ粒子を藻類へ投与したところ、細胞数が極大値となる膜圧を得ることが出来た。これは、本調製手法によって得られるナノ粒子の溶解速度が、植物細胞にとって最適となる値周辺で得られたことを示唆しており、溶解性の制御可能範囲が本検討に適したものであることがわかった。 最後に、植物細胞に必要と考えられる栄養成分19種類に対して、褐虫藻を用いたスクリーニングを行い、投与量と細胞成長の相関を明らかにするとともに、粒子化可能な成分に関しては、粒子による投与で細胞成長が変化する成分を特定した。一部の成分には、シリカコーティングによる溶解性制御を施すことで、細胞成長が変化することも確認し、溶解性制御による成長制御の手法がZn以外にも適用できることを見出した。 以上の検討により、金属ナノ粒子から植物細胞へのミネラル吸収を評価するための下準備が完了したことから、本研究課題はおおむね順調に進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の令和4年度における中間目標は「細胞壁に吸着したナノ粒子から細胞内へ金属が吸収される際のモデルを構築し、溶解速度を制御する操作因子を明らかにする」である。この達成のために以下の検討を行う。 まず、ナノ粒子の溶解速度は粒径を変化させた際にも変わることから、膜厚制御によって得られた最適な溶解速度と同程度の溶解速度を持つ粒径のナノ粒子を造粒し、植物細胞へ暴露した際の細胞数の変化を比較する。これにより、溶解速度が細胞成長に及ぼす影響が、細胞へのナノ粒子の凝集など、その他の操作因子に対して優勢かを確認する。比較に際しては、逐次抽出法によって、細胞部位ごとのミネラル吸収量を測定し、細胞へのミネラル吸収の時間変化を追跡することで、ナノ粒子から細胞内へ金属が吸収される際の正確な物質収支モデルを構築する。 物質収支モデルの構築にあたっては、フローサイトメトリーを用いた解析を併用する。細胞に対する散乱光強度を解析することで、植物細胞へのナノ粒子の凝集を定量化するとともに、細胞内への吸収量の時間変化と組み合わせることで、より詳細な吸収モデルの構築が可能となる。これにより、細胞成長を制御する操作因子の特定が可能となる。 モデルから導き出した最適な取り込み速度となるナノ粒子を造粒し、実証試験を行う。同時に、有機性配位子や吸着剤などの添加など、共存物質による取り込み速度の制御も検討し、多面的な方法で成長制御のプロトコルを構築する。また、初年度のスクリーニング結果を用いて、Zn以外のミネラルのナノ粒子化による成長制御についても同様の検討を行う。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の蔓延に伴い、発表予定の学会の開催がオンラインのものに切り替わったことや、共同研究者との打ち合わせ方法を、遠隔会議システムによるものに切り替えたことから、当初の予定よりも旅費への支出が減少したことで次年度使用額が発生した。 次年度については、本年度の予備的検討において、投与粒子の大部分は細胞周辺に存在する可能性が高いことが見出されたことから、ナノ粒子の凝集性を定量化する必要性が増しており、フローサイトメーターなど凝集性測定のための共同利用機器の利用料と、現地までの旅費に使用することを検討している。
|
Research Products
(2 results)