2021 Fiscal Year Research-status Report
抗体-薬物複合体を固液界面で立体選択的に合成・高純度化するクロマトグラフィー
Project/Area Number |
21K04793
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
吉本 則子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (40432736)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 抗体薬物複合体 / antibody / イオン交換クロマトグラフィー / 疎水クロマトグラフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
抗体薬物複合体は、高い薬理活性をもつ低分子化合物と分子認識能力をもつ抗体との複合体である。さまざまな疾患に対する応用が期待されるが、抗体タンパク質の部位特異的な化学修飾は難しく、低分子化合物の修飾反応では複数の修飾異性体が生成する可能性がある。本研究では、イオン交換クロマトグラフィーおよび疎水クロマトグラフィーを用いて、修飾異性体の分離を最適化する手法の確立を目指すとともに、これらクロマトグラフィーでの結合様式を利用して、抗体薬物複合体の固相における選択的な修飾反応の確立を目指す。初年度は、抗体薬物複合体の構造により、分離挙動にどのような違いが現れるのかを検討した。低分子化合物と抗体との修飾では、化合物の自由度や特定の条件での化合物の切断が可能な分子の導入のためにスペーサーが用いられる場合がある。このスペーサーに着目して、長さの異なるポリエチレングリコールをスペーサーとして抗体薬物複合体に導入して、分離特性を調べた。また、低分子化合物にはFITCを用いた。 イオン交換クロマトグラフィーでは、PEG分子量が増加するにつれて、担体との相互作用が弱まり修飾異性体間の分離が向上する傾向が見られた。一方、疎水クロマトグラフィーでは、PEGの導入とともに、FITCをもたないPEG化IgGでは担体との相互作用が強まる傾向が見られたが、FITCをさらに修飾したIgG-PEG-FITCでは、FITCの修飾数が増加すると担体との相互作用が弱まる傾向がみられた。これらより、イオン交換クロマトグラフィーでは、分子内部の電荷を認識しているため分子サイズが分離に影響しているが、疎水クロマトグラフィーでは、分子表面に存在する官能基との相互作用が分離に大きく影響すると考えられる。 これら各クロマトグラフィーの分離のモデル化についても検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スペーサー分子の導入により反応過程における溶媒検討にかなりの時間を要したが、網羅的に溶媒検討を重ね、各修飾反応段階において溶媒交換の操作を導入することにより、分離のモデルとなるスペーサーを導入した抗体薬物複合体の修飾反応を進行させることができた。作成した化合物を用いて、イオン交換クロマトグラフィーおよび疎水クロマトグラフィーのいずれでも、モデル薬物抗体複合体の修飾異性体の分離の検討が可能であった。それぞれの分離モードで、修飾異性体の分離特性は、特徴的な挙動を示すことが明らかとなり、研究計画は順調に進展しているものと考えられる。 また、イオン交換クロマトグラフィーにおけるイオン交換反応に基づいた分離モデルを分離挙動に当てはめることで、修飾異性体の分離挙動の数学的な解析も可能であった。 疎水クロマトグラフィーでは、担体との相互作用に、結合モデルを当てはめず、分配平衡モデルを適応することで、分離特性の予測を行った。 これらの分離のモデル化により、クロマトグラフィーの膨大な条件での分離が予測可能となるため、分離の解析も順調に進行しているものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、低分子化合物として、分子量の異なるもの、荷電部位を有するものなどの一連のモデル化合物をして、合成と分離を検討する予定である。スペーサー分子も含めて、構造特性や化学特性が、抗体薬物複合体の分離挙動にどのような影響を及ぼすのかについて解析し、分離を支配するパラメータの特定を行う。 また、今年度に明らかになった結合様式に基づき、担体上での抗体分子の修飾反応についても検討を行う予定である。反応のstepごとに溶媒組成の最適化を行っているが、バッチ操作では、溶媒を変えるごとに、溶質と溶媒の分離と溶質の回収を行っており、そこでの損失が多い。このため、担体との結合を利用して、分離と回収の効率化をはかる。 分離のモデルについては、今年度に適応したものを引き続き使用し、勾配溶出実験から得られた溶出結果から、分離パラメータを取得する。また、得られた分離パラメータを、分離モードの異なる等組成溶出法に対する応用の可能性について検討を行う。さらに、吸着量の解析も行い、分離の効率についても評価を行う。
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Research Products
(3 results)