2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of Escherichia coli catalyst with highly integrated excellent functions for high performance of microbial fuel cell
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21K04796
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
東 雅之 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (20285282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾島 由紘 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20546957)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 微生物燃料電池 / バイオ燃料電池 / 微生物触媒 / 代謝 / MFC / 大腸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
バイオ燃料電池は再生可能なクリーンエネルギーを生み出すシステムとして注目されている。本課題では、燃料をグルコースとし微生物触媒の開発に取り組んでおり、「染色体改変技術を用いた大腸菌への有用機能の集約」と「触媒の簡易評価システムの構築とそれを用いた有用変異のスクリーニング」から改善を進めている。先行研究で、高い平均出力を示す5重遺伝子欠損株(Δ5)の構築に成功した。さらに、Δ5にホスホエノールピルビン酸からオキサロ酢酸への変換に関わるppcを導入した株では、平均出力は野生株より少し低いが、クーロン効率は大きく増加することを明らかにした。 本研究では、Δ5やΔ5+ppcをベースに遺伝子改変を重ね、平均出力やクーロン効率の評価を進めた。Δ5+ppcではグルコース消費の低下が平均出力の低下の原因と考えられ、グルコース取り込みに関連する遺伝子galPの過剰発現をΔ5+ppcに導入した。その結果、野生株やΔ5には及ばないがグルコース取り込みが改善され、平均出力はΔ5には少し及ばないがΔ5+ppcからは大きく改善された。また、クーロン効率はΔ5より高くΔ5+ppcと比べ僅かに低下する程度であった。Δ5+ppc+galPもΔ5に並ぶ優れた株と言える。その他にも、Δ5やΔ5+ppcに遺伝子欠損や過剰発現を重ね合わせて検討しているが、現状では上記と比べ優れた株は得られていない。触媒の簡易評価システムの構築については、キノン系化合物HNQの酸化型(赤橙色)と還元型(無色)の色の違いから、細胞からメディエーターへの電子の移動量を目視により簡易的に評価する系について検討し、WTとΔ5を例にして色の違いが明確になる条件を明らかにした。野生株にランダム変異を加え単離した約500株を用いて評価し、Δ5ほどではないが色の違いが生じる株が得られており、スクリーニング系としても利用可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、2つのアプローチから大腸菌の触媒としての機能を高めることを目標としている。 1つ目の染色体改変技術を用いた大腸菌への有用機能の集約に関する取り組みでは、Δ5へのppcやgalPの導入により、グルコースの取り込み量が変化し、平均出力やクーロン効率が大きく影響されることを明らかにした。結果として、Δ5+ppcをベースにして高いクーロン効率を維持しながら出力を高めることが可能であることが分かった。また、Δ5にpncBを過剰発現させると、細胞内のNAD量が増加することを確認できたが、平均出力の向上には繋がらなかった。このようなネガティブではあるが今後の計画を考える上で参考となる知見は多く集まっており、平均出力ではまだΔ5を超えるものが得られていないが、今後改善が進むことが期待される。 2つ目の触媒の簡易評価システムの構築とそれを用いた有用変異のスクリーニングでは、期待通りに目視で判断できる簡易スクリーニング方法がほぼ確立された。また、野生株をベースにランダム変異株500株ほど取得し、それらを用いて予備検討を行った結果、野生株より高い出力を示す株が得られており、これまでの電池評価に比べ短期間に多くの株を評価できることが分かった。今後はΔ5をベースにした実践により優れた株が取得できることが期待される。 以上、現状ではまだ目に見える出力の改善までは進んでいないが、ほぼ当初の計画通りには進んでいると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度については、当初の計画通り2つの手法を用いた菌株の構築と評価を並行して続ける。1つ目の「染色体改変技術を用いた大腸菌への有用機能の集約」では、Δ5+ppc株のppc発現量をプロモータ活性の調整により弱め、さらにそれにgalPの過剰発現を組み合わせるなどした株を新たに構築する。それらによる発電評価すなわちグルコース消費、平均出力、クーロン効率を解析し、得られた結果からグルコース消費と平均出力やクーロン効率の関係を理解し、今後の触媒改善に役立てる。また、代謝によって生じたNADHから細胞膜で電子を受け取った後の、細胞膜上での電子の流れに注目し、その流れに関連する遺伝子をΔ5に新たに導入もしくは欠損させた株を構築する。このような各種遺伝子改変株を構築し、触媒の改善を試みる。2つ目の「触媒の簡易評価システムの構築とそれを用いた有用変異のスクリーニング」では、Δ5をベースにEMS処理などでランダム変異を加える。取得した変異株を、2021年度に確立したHNQの色の変化を目視により確認する簡易スクリーニング系で評価し、Δ5より色の変化が早い株を選抜する。選抜株については発電評価を行いΔ5と比較する。2022年度は、計画的な遺伝子改変とランダムなスクリーニングの両面から高出力株取得を試みる。これらの取り組みにより有望な変異株を複数取得し、次年度では、有望なランダム変異株に計画的な遺伝子改変で改善に繋がった改変を重ね合わせるなどし、大腸菌燃料電池の高出力化に取り組む。
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Causes of Carryover |
2021年度の物品費として消耗品の購入を予定していた金額の一部を繰り越し、その全てを本年度の物品費(消耗品)に加えることにした。これにより、2022年度の消耗品は予定の1,000,000円から1,425,685円に増える。繰越金が生じた理由は、予定より大学からの公費が多く配分され、そちらを優先して使用したことが大きな理由で、その他に、遺伝子組換え作業と分析作業を、ある程度失敗を見込んで予算を立てていたが、実験自体はスムーズに進んだこともある。本年度は、まだ目的の株が取得できていないこともあり、実験量自体を計画より増やす必要があり、また、前年度より使用できる公費は減ることもあり、繰越金をそのまま2022年度の物品費に加えた。
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Research Products
(2 results)