2022 Fiscal Year Research-status Report
ヒト筋線維芽細胞の平滑筋細胞形質転換にかかる分子機構の解析と形質転換要素の同定
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21K04797
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
木原 隆典 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (90436535)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 筋線維芽細胞 / IV型コラーゲン / 形質転換 / 平滑筋細胞 / コラーゲンゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
筋線維芽細胞は器官の間質細胞から生じる細胞であり、器官の修復を担う一方、線維症など慢性炎症疾患の原因細胞でもある。筋線維芽細胞の形質を制御する分子機構を解明することができれば、線維化の抑制・治療につながる。本研究は、研究者が開発した架橋IV型コラーゲンゲルを用いて、筋線維芽細胞を正常間質細胞である平滑筋細胞へと形質転換させることで、その分子機構を解明し、形質転換要素の同定を目指す。今年度はニワトリ平滑筋由来筋線維芽細胞を用いて架橋IV型コラーゲンゲルからの化学シグナルを受容する機構について検討を行った。その結果、ある特定のグリコサミノグリカンによってIV型コラーゲンゲルによる筋線維芽細胞の伸長・ネットワーク形成が完全に阻害されることが明らかとなった。このことは、このグリコサミノグリカン鎖を有する分子がIV型コラーゲンゲルの化学シグナル受容に働くことを示唆する。さらに、IV型コラーゲンゲルの物理的なシグナルの影響を明らかにするため、I型コラーゲンを主体とする新規ゲル器材を用いて筋線維芽細胞を培養し、それによる細胞への影響を調べた。その結果、このゲル器材を利用することで筋線維芽細胞の増殖がほぼ完全に抑制されることが明らかとなった。このゲル器材上で培養した筋線維芽細胞にIV型コラーゲンの化学シグナルを加え筋線維芽細胞の形質転換を試みたところ、細胞増殖を抑えつつ、一定レベルの細胞伸長まで誘導できたが、平滑筋細胞特異的タンパク質の発現までは見られなかった。IV型コラーゲンゲルは、化学シグナルによる細胞伸長誘導、物理シグナルによる増殖抑制作用に加え、何らかの機構で遺伝子発現制御も実現していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ニワトリ筋線維芽細胞を用いてIV型コラーゲンの化学シグナル受容体の分子基盤、物理シグナルの作用について明らかにすることができた。しかしながら、予定していたヒト平滑筋細胞由来筋線維芽細胞を用いたトランスクリプトーム解析まで至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ニワトリ筋線維芽細胞を用いてIV型コラーゲンゲルのどのような作用によって平滑筋細胞特異的遺伝子の発現が誘導されているかについて解析を進める。またヒト筋線維芽細胞を用いてIV型コラーゲンゲル上におけるトランスクリプトーム解析を進める。
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Causes of Carryover |
ヒト筋線維芽細胞を用いたトランスクリプトーム解析を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けトランスクリプトーム解析実施にまで至らず次年度使用額が生じた。2023年度予算で、ヒト筋線維芽細胞のトランスクリプトーム解析、IV型コラーゲンゲルによるシグナル伝達解析を実施する。
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