2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K04799
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
田原 義朗 同志社大学, 理工学部, 准教授 (30638383)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 経口投与 / 油状物質 / 界面活性剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では経口投与(飲み薬)として投与可能な油状微粒子の開発を行い、油状物質の吸収メカニズムの解明と、新しい経口デリバリーシステムの創出につながる研究を行うことを目的としている。初年度には油状微粒子として利用可能な物質の選定を行なっており、飲み薬として投与可能な成分のみによって構成されていること、薬を封入可能であること、粒子サイズをコントロールすることが可能であることに注目して検討を行った。その結果、油状物質はその融点が最も重要であることが分かり、界面活性剤にはそれ単独では薬の可溶化濃度が低い界面活性剤を利用する必要があることが分かった。またこのとき薬の封入特性についても定性的に検討を行った。その結果、油状物質を用いなかった場合には薬が沈殿する条件でも、ある油状物質を用いると薬が沈殿することなく水中に分散することが可能であることが明らかとなった。一方でこの油状物質で得られる油状微粒子は粒子サイズのコントロールは難しいことから、最終的な目標を達成するには、ある一つの油状物質を用いるのではなく、複数の油状物質を組合せることが必要であることが示唆される結果となった。今後は薬の封入性について定量的な検討を行い、最終的には同一の薬の投与量であるが、粒子サイズの異なる油状微粒子などを作成可能であるかを検討したい。またリパーゼなどを含む、消化管内の環境下においての薬の放出についても検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では油状微粒子の作成方法の検討を行い、以下のように本研究の目的を満たす油状微粒子として利用可能な物質の選定を行えたことから、概ね順調に進展していると考えられる。本研究で扱う油状微粒子は油状物質と界面活性剤によって構成されており、常温で固体または液体である油状物質が水中に分散したサスペンションまたはエマルションの状態であるコロイド粒子を作成することを目標として検討を行った。その結果、融点の低い油状物質では粒子同士の融合が起こることから、粒子サイズのコントロールが難しいということがわかった。また融点の高い油状物質では球状の粒子の作成が難しいということがわかり、こちらも粒子サイズのコントロールが難しいという問題があることがわかった。したがって本研究で用いる油状基剤は適切な融点をもつ物質や、これらを組合せたものである必要があることが明らかとなった。また本研究では薬を封入可能な油状微粒子を作成することを目標としているが、界面活性剤の種類によっては、界面活性剤のみで薬を可溶化してしまうものが存在する。最終的には油状微粒子に封入された場合の薬の体内動態の解析を行いたいことから、界面活性剤については薬の種類に応じて、最も可溶化濃度の低いものを選定し、油状微粒子の作成を行った。その結果、適切な融点をもつ油状物質と、可溶化濃度の低い界面活性剤を組み合わせることによって球状の油状微粒子を作成することが可能であることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目である2022年度は、上記のように作成された油状微粒子のサイズのコントロールと薬の封入率について検討を行う。薬の濃度の測定方法は、2021年度の可溶化濃度の検討において既に確立済みであり、同様の方法によって油状微粒子中の薬の濃度の測定を行う。粒子サイズについては油状物質や界面活性剤の濃度などを変更することで粒子サイズがコントロール可能かどうかを検討する。また粒子サイズと薬の封入率の関係についても検討を行い、最終的には同一の薬の投与量であるがサイズの異なる油状微粒子などを作成可能であるかを検討したい。また経口投与後の消化管の環境下での薬の放出についても検討する必要がある。具体的には現在、油状微粒子の作成が可能である油状物質は、リパーゼによる分解を受けやすいことが予想されることから、リパーゼの存在下でも薬を封入可能かどうかについても検討を行う予定である。
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