2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K04801
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
二見 翠 (北添翠) 岡山理科大学, 工学部, 准教授 (10467748)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カチオン化タンパク質の導入経路 / エンドサイトーシス / エンドサイトーシス阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は申請者が開発してきた「タンパク質を化学修飾によりカチオン化すること で生きた細胞内に導入する技術」において詳細が明らかになっていない導入原理を解明する ことを目的としている。初年度である昨年度は、各種エンドサイトーシス阻害剤で処理した細胞に対する導入効率を調べることで経路を絞ることを目標に研究を行った。 まず導入対象の人工転写因子タンパク質を作成し、化学修飾によるカチオン化を行ったどう動物細胞に導入し、導入した人工転写因子が細胞内で活性を発揮して標的遺伝子が発現することを確認した。この評価系を用いて、エンドサイトーシスの阻害剤としてマクロピノサイトーシスの阻害剤であるGo6983とクラスリン経路の阻害剤であるスクロース、カベオラ経路の阻害剤であるnystatinを用い、カチオン化人工転写因子の導入にどのような影響を与えるのか調べた。その結果、スクロースで処理した場合のみ、カチオン化人工転写因子の導入による細胞内の転写活性が著しく低下した。 このことから、カチオン化タンパク質の導入にクラスリン経路が関与している可能性が考えられたため、更に複数のクラスリン経路の阻害剤を用いて検証を行った。クラスリン経路の阻害剤として、クラスリン被覆ピットの形成を阻害するChlorpromazine、エンドサイトーシス小胞を細胞膜から切り離すダイナミンを阻害するDynasoreであらかじめ処理した細胞に対してカチオン化人工転写因子を導入し、その導入効率の変化を調べた。その結果、どちらの阻害剤を用いた場合もカチオン化人工転写因子の細胞内での転写活性が大きく低下したことから、カチオン化タンパク質の導入経路としてクラスリンエンドサイトーシスが重要である可能性がかなり高いと考えられ、初年度の目的であったカチオン化タンパク質の導入経路の絞り込みに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載した通り、本研究は各種エンドサイトーシス阻害剤で処理した細胞に対する導入効率を調べることで経路を絞ることを目標に昨年度の研究を行った。 複数のエンドサイトーシス阻害剤を用いて、特定のエンドサイトーシス経路を阻害した細胞に対するカチオン化タンパク質の導入効率の変化を調べ、その結果、カチオン化タンパク質の導入経路がクラスリンエンドサイトーシス経路である可能性が高いと考えられるデータをえることができた。 このことから初年度の研究目標はおおよそ達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度、カチオン化タンパク質の導入経路として、クラスリンエンドサイトーシス経路が重要であると示唆された。この結果を受け、クラスリンエンドサイトーシス経路に関わるタンパク質をsiRNAによりノックアウトした細胞を用意し、このことでカチオン化タンパク質の導入にどのような影響を及ぼすか調べる。 またカチオン化タンパク質が結合する細胞表面タンパク質を探索する。ビオチン化し たカチオン化タンパク質とストレプトアビジン固定化担体で結合タンパク質を集め、 LC-MS/MS解析により同定を試みる予定である。同定に成功した場合は、このカチオン化タンパク質が結合する細胞側タンパク質についてもをsiRNAによるノックアウト実験を行い、カチオン化タンパク質の導入効率に対する影響を確認する。 この本年度の計画は申請書どおりである。
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