2021 Fiscal Year Research-status Report
テラヘルツ励起による単一電子のコヒーレント制御と機能性素子への応用
Project/Area Number |
21K04820
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
柴田 憲治 東北工業大学, 工学部, 教授 (00436578)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 量子ドット / 単一電子トランジスタ / テラヘルツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、応募者がこれまでに培った10 nm級量子ドットの単一電子トランジスタへの応用技術に基礎を置き、単一電子・スピン状態とその動力学がクーロン相互作用やスピン相互作用、テラヘルツ(THz)光、フォノンなどを用いて多彩に制御できることを実証するとともに、量子情報処理に向けた新規デバイスへの応用を探索することを目的として研究を行っている。
昨年度は本プロジェクトの初年度であったため、まずは10nm級の単一量子ドットを活性層とするトランジスタ素子の作製と伝導特性評価を中心として研究を行った。応募者がこれまで行ってきたGaAs基板上に形成された自己組織化量子ドットを活性層とする単一量子ドットトランジスタの作製の他、特に新しい取り組みとして、太陽電池など光デバイスへの応用が期待されるPbSコロイド量子ドットをソースドレイン金属電極の間に挟むことで単一のPbS量子ドットを介した電子輸送特性を測定することに成功した。極低温環境下で明瞭な階段状の電流-電圧特性が観測され、その様子がゲート電圧によって変調される様子が観測された。この特性はPbS量子ドット中に形成された電子の量子準位を介して電子が1つずつ流れることを示しており、素子が単一電子トランジスタとして機能していることが分かった。更に詳細な伝導特性評価により、量子ドット中の量子準位間隔や電子の帯電エネルギーは30-100meV程度となることが分かり、THz帯光子のエネルギースケールに相当するため、THz帯の量子情報デバイスへの応用が可能なことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は従来の自己組織化InAsやInSb量子ドットを活性層とする単一電子トランジスタに加えて、特に、コロイド量子ドットを活性層とするトランジスタの形成に取り組み、本研究に用いる量子ドット材料としてコロイド量子ドットが有望であることを示すことが出来た。コロイド量子ドットには実に多種多様な性質を示す材料があるため、本分野の研究に新たなパラダイムを開くことができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、量子ドットトランジスタ素子の作製を引き続き行うことに加え、THz波を照射した上での伝導特性評価を始める予定である。また、コロイド量子ドットの材料としてPbS 量子ドット以外の材料系も検討することで、コロイド量子ドットの中でも特に量子情報デバイスに向いた材料系の探索を行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
定期的に東北地方で発生する大地震の影響で実験機器が稼働できない期間があった。さらに、コロナ禍による出張制限の結果、外部研究機関と予定していた共同研究の一部に遅延が生じた。以上から、次年度使用額が発生した。幸いにも昨年度の研究により目標達成のための新たな研究の方向性が見えてきたので、そちらへも研究費を振り分けつつ研究を加速させることで、上記の遅れは取り返すことができると考えている。
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