2022 Fiscal Year Research-status Report
Creation of low-dimensional magnetism through on-surface chemical reaction
Project/Area Number |
21K04821
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
櫻井 亮 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主幹研究員 (60280731)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | スローダイナミクス / 2次元ネットワーク / 分子スピン / 熱ゆらぎ / スピンの絡みあい |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、低次元系で新しい磁気秩序を生み出す分子スピン集合体の磁性と構造の関係を解明し、創生した機能を応用することにある。ナノシート表面を拡散する分子がナノスケールの構造体を作り電荷移動によって高スピン状態を作り出すメカニズムの解明、100‐500個の分子スピンが密にナノクラスター内に集積し磁気双極子相互作用によって生み出される複雑な磁気応答特性を理論と実験の両面から解明する萌芽研究である。 マルコフ連鎖を取り入れたモンテカルロシュミレーションによって、ナノクラスター内で磁気双極子エネルギーを最小化する分子スピンの向きの最適化配置を各温度に対して実施したところ、スローダイナミクスが実験的に得られる温度域(15K以下)でスピンの向きの絡み合いによる双極子エネルギーの大きな減少が見られた。絡み合いが起こる温度域で各分子サイトでの双極子エネルギーの分布を調べ、サイトエネルギーが小さな領域がドメインのように形成されること、液体のように位置を変える現象を見つけた。ナノクラスター内でスピン液体的な振る舞いをしてスローダイナミクスやスピン相関の創成と関連している。ナノクラスター間に働くナノシートを介した磁気的な相互作用はナノクラスター間の距離に依存しており、ナノクラスター内でのスピンの絡み合いを調整することが可能であることを見出した。この結果は、2次元ネットワークに新機能が創成できたことを実証すると共に、新しい概念の創成を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2次元ネットワークで、幾何的な構造に起因した新しい物性が見出されており、その起源を理論モデルと組み合わせて解明しつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
2次元ネットワーク磁性のメモリー効果やエイジング効果の解明。 表面化学反応を利用した新しい2次元分子ネットワークの作成と評価
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Causes of Carryover |
実験結果の解釈が複雑であり、理論モデル計算に多大な時間を割かれたために、論文の推敲や作成に時間を要したため。 論文は投稿されつつあり、来年度は今年度実験の遅れを十分に取り戻せると思われる。 来年度の予定:新しい分子を使った表面化学反応による2次元ネットワークの作成と機能創成。
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