2022 Fiscal Year Research-status Report
微小液滴を反応場とする単一ナノメートル合金粒子の高効率合成と光学・磁気特性の探索
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21K04833
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
八ツ橋 知幸 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70305613)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レーザー誘起プラズマ / 金属錯体 / 高強度フェムト秒レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は近赤外フェムト秒レーザーを用い、水の多光子イオン化により生じる水和電子によって貴金属イオンを還元、あるいは遷移金属錯体の多光子吸収によるナノ粒子の作製を報告してきた。本研究ではこれらのボトムアップアプローチによって有機金属錯体やイオンを原料とする合金ナノ粒子の作製を試みた。 第4周期遷移金属(Fe、Co、Ni)のアセチルアセトナート錯体はいずれもレーザー照射によって反応が進行し、Feでは粒径が約15 nmの凝集体が得られた。一方、CoとNi錯体では特性X線スペクトルから元素の存在は明らかなものの、粒子は電子顕微鏡の分解能以下の径であった。さらに、第4周期元素だけでなく、他の周期ならびに族の金属についても検討した。第4族のZr(第5周期)とHf(第6周期)のアセチルアセトナート錯体を原料としたところ、前者では白色コロイドが生成するものの、電子顕微鏡像には明確な球状粒子はみられず不定型な網状の生成物が得られた。一方、Hfでは分散した粒径約14 nmの球状粒子が得られた。Fe、Co、Niに比べてどちらの元素の還元電位も約-1.5 Vと大きく卑であり、還元法では得ることの極めて困難な元素のナノ粒子が多光子反応により得られたといえる。また、錯体の吸収スペクトル、モル吸光係数、そしてレーザー照射に伴う変化もほぼ同じであるにも関わらず、周期によってZrとHfで大きな違いが出たことは反応機構を議論する上で重要な知見である。以上、単体ではナノ粒子の生成がそれぞれ確認できたが、現在のところ遷移金属錯体混合系では合金生成の明瞭な結果が得られていない。そこでイオンを原料とする貴金属合金ナノ粒子の作製を試みたところ、Au-Pt-Ag三元合金ならびにAu-Pt-Ag-Ir-Pd五元合金の作製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までにアセチルアセトナート錯体の水溶液を原料として単一金属(Fe、Co、Ni、Hf)のナノ粒子生成に成功した。しかしながら、遷移金属錯体混合系の水溶液では現在のところ単一金属と同じ実験条件の下では合金生成の明瞭な結果が得られていない。特に合金形成を明確に示すことの出来る元素マップ測定が出来ていないため元素組成の決定までに至っていないのが現状である。一方、FeCoNi合金の液中レーザーアブレーションで生じた約50 nmの粒子については1ミクロン程度の広い範囲かつビームスポットを広げることによって良好な元素マップの取得に成功し、FeCoNiコアシェル型合金ナノ粒子に同定した。そのため、ボトムアップで生じた粒子は単一金属(Co、Ni)と同様に学内の電子顕微鏡の分解能では観測できない粒径である可能性がある。一方、貴金属イオンを原料とした場合は、粒径分布が広いものの、粒径が10 nm以下の粒子を得ることができている。 本研究のために初年度は高繰り返し紫外ピコ秒レーザーを用いて実験を行ったが、製造元の事情により当初の3倍の借用料を請求されたため使用を断念した。そのため、繰り返し周波数、パルス幅、そして出力では劣るが、近赤外、可視光、そして紫外光の出力が可能なピコ秒レーザーを購入し、集光掃引光学系を再構築した。いずれにせよ紫外ピコ秒レーザーを用いた場合は金属錯体の反応は起こるものの、レーザー照射による液体の温度上昇が顕著であり、外部から冷却などの処置を行ったが改善は芳しくなかった。しかし、高繰り返しレーザー用に作製したフローセルを用いる連続光照射系は今後の研究に活用する。
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Strategy for Future Research Activity |
現状では遷移金属錯体を原料とする合金ナノ粒子の生成は確認できていないが、貴金属イオンを原料とする合金の作製には成功した。遷移金属についてはフェムト秒レーザーを用いて引き続き金属錯体混合系、そして金属錯体-金属塩混合系を用いて合金作製を試みる予定である。三元合金(Au-Pt-Ag)ならびに五元合金(Au-Pt-Ag-Ir-Pd)の作製に成功した貴金属系については、有機溶媒/水のエマルションを用いて粒径を制御し、シングルナノメートルオーダーサイズ粒子の作製を試みる。また、元素を7あるいは8元素まで拡張するが、作製する合金粒子の同定には元素マップの測定が必須である。Os、Ir、PtとAuのLα線については分離・同定は問題ないが、特にRu、Rh、PdとAgの特性X線のピーク位置が近接・重畳している。そのため明瞭に分離・同定できるのはRu(Lα)とAg(Lβ2)のみである。そこでIr-Pt-Auを合金ナノ粒子の基本構成3元素として、Ru, Rh, Pd, Agをそれぞれ加えていく方針とする。測定用試料の準備も含めて現在用いている学内の電子顕微鏡による元素マップ測定の手順を改良する。分解能的に同定が困難な場合は外部依頼も検討する。
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Causes of Carryover |
紫外(専用)ピコ秒レーザーのレンタル料について昨年度の3倍が提示されたため使用が不可能になった。代わりに他の財源で新たにレーザーを購入することになった。当該助成金は新たに導入したピコ秒レーザー(紫外、可視、近赤外発振)に必要な波長ごとの光学部品に使用する。
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Research Products
(10 results)