2023 Fiscal Year Annual Research Report
微小液滴を反応場とする単一ナノメートル合金粒子の高効率合成と光学・磁気特性の探索
Project/Area Number |
21K04833
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
八ツ橋 知幸 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70305613)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高強度フェムト秒レーザー / レーザー誘起プラズマ / 貴金属イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
近赤外フェムト秒レーザーを用い、水の多光子イオン化により生じる水和電子によって貴金属イオン(Au、Pt、Ag、Ir、Pd)を還元し、ハイエントロピー合金ナノ粒子(HEA NPs)を作製した。貴金属HEA NPsの作製にあたっては次の3点に留意した。①原料の安定性:原料となるイオンの還元電位(vs. SHE)はAuの1.5 VからIrの0.77 Vと広範囲にわたっているため、単に原料となるイオン水溶液を混合しただけでも粒子が析出する可能性がある。②レーザー照射中の変化と反応終点の見極め、③生成したコロイドの安定性:生じたナノ粒子が凝集することで分散液の状態を保てなくなる可能性がある。①については各イオン水溶液を混合後、数時間経過後には還元電位が最も貴なAuが還元されてプラズモン吸収が生じた。そこで吸収スペクトルの変化がほとんど現れない混合後3分以内にレーザー照射を開始した。ここで、フェムト秒レーザーを水に集光すると、水和電子と同時に強力な酸化剤である水酸化ラジカルが発生する。水酸化ラジカルを捕捉することで還元電位が-1.07 VであるYbの3価イオンが水中かつ空気下で還元できることが分かっている。そこで反応性の向上を期待して2-プロパノールを添加したが、アルコールの弱い還元作用によって暗下で還元がすすみAu NPsが生じた。②に関しては生じたNPによる散乱によって紫外から近赤外部の広い範囲で見かけの吸光度(減光度)の上昇が見られた。レーザー照射約30分で減光度は飽和し、反応の終点の目安になることが分かった。③については3週間程度で減光度が約半分となり、NPsが凝集していると思われた。そこで、保護剤としてポリビニルピロリドン(PVP)を添加してコロイドを作製したところ、110日後でも減光スペクトルに明確な変化は認められず、安定なコロイドの生成に成功したと言える。
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