2022 Fiscal Year Research-status Report
Synthesis and characterization of warped nanoribbons
Project/Area Number |
21K04840
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
三苫 伸彦 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (90768673)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ナノカーボン / π共役系高分子 / 湾曲構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、端部構造が原子レベルで精密制御された一次元物質であるグラフェンナノリボン(GNR)を有機合成により得ることができるようになったが、それらはいずれも嵩高い親溶媒性置換基を有しており、GNR本来の電子物性が覆い隠されてしまう問題を抱える。当初の研究計画では湾曲構造を有し、それ自身が高い親溶媒性を有する七員環や八員環から成る芳香族化合物に着目したが、研究を進める中で一次元鎖が複雑に絡み合い、歪んだ層状構造を形成する、透明な薄膜状のπ共役系高分子(カーボンナイトライド薄膜: CNTF)を合成できることを見出した。この薄膜状π共役系高分子に固有の電気的・光学的性質を明らかにすることに取り組んだ。 窒素含有するπ共役系小分子を加熱重合させることによりCNTFは得られる。また、原料に炭素源を混ぜることにより、CNTF中の炭素/窒素比を変えることができる。炭素比が増大するほど、構造中の歪みが増大することが明らかになった。また、窒素比が高い状態では約2.7 eVのエネルギーバンドギャップを有して青色蛍光を示すが、炭素比が高くなるほどにエネルギーバンドギャップは小さくなり、蛍光は消光する。炭素比の増大に伴い、CNTFの電気伝導度は増大し、可視光照射に大して数百倍の電気伝導度変化を示すことも判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定とは異なるが、研究を進める中で一次元鎖が複雑に絡み合い、歪んだ層状構造を形成する、透明な薄膜状のπ共役系高分子であるCNTFを合成できることを見出した。この薄膜状π共役系高分子は固有の電気的・光学的性質を示しており、更なる解明が望まれる。
|
Strategy for Future Research Activity |
CNTFの機械的強度、電気伝導度の温度依存性などの測定を通じ、更なる物性を解明する。CNTFは折り曲げが可能であり、フレキシブルエレクトロニクスデバイスなどへの応用を検討する。
|
Causes of Carryover |
研究所内でのリサイクルにより、無償にていくつかの実験試薬や装置を入手できたために次年度使用額が発生した。単結合とπ共役の違いを見分けるには分子の振動モードを測定することが有効であるため、分光装置の購入を検討している。
|