2021 Fiscal Year Research-status Report
Ag形ゼオライトを用いたレアアースフリー蛍光材料の蛍光機構解明
Project/Area Number |
21K04858
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
鈴木 裕史 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (50236022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮永 崇史 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70209922)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ゼオライト / フォトルミネッセンス / Agクラスター / XAFS / レアアースフリー |
Outline of Annual Research Achievements |
新規発光材料として有望視されている【Ag充填ゼオライト】を用いたレアアースフリー蛍光材料の蛍光発現機構解明のため、Agクラスターの形成・崩壊、あるいはAgイオンの移動等のAgの状態変化と発光変化との関係を明らかにすることを目的として研究を遂行した。 一部の研究者達はAgクラスターが発光の起源であると主張している。そこで、まずはX線吸収微細構造分析によりAgクラスターが形成されていることが確認されている真空下における蛍光測定を行った。まずは蛍光測定用セルを設計製作し、様々な波長を用いて真空下での蛍光測定を可能にした。その結果、真空下で新たな蛍光バンドが観測されることはなく、大気中(真空排気前)で観測されていた蛍光バンドの強度が弱まるだけであることを明らかにした。この測定結果により、真空排気による形成されるAgクラスターが蛍光発現の原因でないことを示た。これに関する論文は、現在執筆中である。 AgゼオライトにおけるAgクラスター形成過程の時間分解(1 min)フォトルミネッセンスおよびX線吸収微細構造(XAFS)オペランド同時測定を行った。XAFS測定はKEK PF-ARのNW10AにおけるQXAFSを採用した。XAFSと蛍光測定を同時に行うことにより、蛍光強度変化がAgクラスター形成または崩壊よりも先行して起きていることを明らかにした。これは、蛍光発現・消滅がAgクラスターによるものではなく、その形成・崩壊の前駆過程であるAgイオンの移動によるものであることを示している。これらの結果は既に書籍(査読あり)として発表済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Agクラスターが形成されている環境における蛍光測定、ならびに1 min時間分解蛍光測定・X線吸収微細構造測定の同時オペランド観測は遂行済みである。 真空下で新たな蛍光バンドが現れず、既にあるバンドの強度が低下するのみであるという結果から、Agクラスターが蛍光発現の原因ではないことが明らかにできた。また、オペランド観測の結果、蛍光強度変化がAgクラスター形成または崩壊よりも先行して起きていることが明らかにできた。また、XAFSスペクトル変化において等吸収点が存在していることを発見し、Agは二状態間を遷移していることを明らかにした。これらの点からAgはペア(2原子)とテトラ(4原子)の組み合わせで変化しているとするモデルを提案した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の目標はミリ秒時間分解XAFS測定の実現である。ミリ秒時間分解測定はPF-AR NW2Aにて既に開始済みである。蛍光測定は十分解析に耐えうるクオリティのスペクトルが得られることが実証されたが、XAFSスペクトルのクオリティは未だ十分とは言えない。測定試料形状の最適化および解析方法・解析ターゲットの最適化を模索中である。令和4年度もNW2Aにおける測定を予定しており、本研究の研究機関中には解析が行える手ごたえは得ている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの蔓延により、出張がなかり制限されたため。また、学会がオンライン開催あるいはオンラインを含むハイブリッド開催となり、その旅費も必要がなくなったため。 2022年度はコロナウィルスのよる出張等の制限がかなり緩和されるので、昨年度断念した出張等の旅費に充てる予定である。
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Research Products
(10 results)