2021 Fiscal Year Research-status Report
Structural understanding of magnetic superconductor single crystals of rutheno-cuprates opened by precise synthesis by partial melting
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21K04860
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
八巻 和宏 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (90579757)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超伝導 / 単結晶 / ルテニウム系銅酸化物 / 銅酸化物高温超伝導体 / 固有ジョセフソン接合 / 圧力高温合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は超伝導と磁性が共存し結晶構造内部に超伝導層(S)/(反)強磁性層(F)/超伝導層(S)が原子層のオーダで積層した接合(SFS接合)を含有する新奇固有ジョセフソン接合として期待されるルテニウム系銅酸化物高温超伝導体「単結晶」を申請者が独自に開発してきた「部分溶融法」により合成すること,特に,化学・物理の2つの圧力効果を積極的に活用した精密合成によって,この系の超伝導転移温度を上昇させることである. 希土類のブロック層への陽イオンサイト置換が超伝導を阻害する要因になっていることが明らかになってきた.そこで希土類のイオン半径に着目し,Tb,Dyといったイオン半径の小さい元素による部分置換の検討を進めている.現時点で,部分溶融法で100×100 平方マイクロメートル大の単結晶の合成と更にEu添加100×100 平方マイクロメートル大の大型単結晶としては初めての超伝導転移の確認に成功した.これは我々の提案してきた希土類のイオン半径がブロック層の置換を考える上で重要とする仮説に沿うものであり,この系の系統的な理解に向けた研究が一定程度進展した. 更にフルテック社製超小型加圧炉FTP-50Kの立ち上げを進め,数気圧程度の弱高圧下での部分溶融によるルテニウム系銅酸化物単結晶の合成に取り組んだ.新たな加圧炉の立ち上げに関しては高圧に関する知識不足と熱電対の高温耐性に欠陥が見つかり,その解決に時間を要したものの,現状ではある程度安定して数気圧下で部分溶融法による合成を行う環境を整えることができた.先ずは先行研究で最も安定した超伝導を示したRuEu-1222系に着目し圧力効果による影響を評価したところ,高温高圧下ではRuEu-1222相が分解することが新たに明らかになった.そのため,現在,最も研究の進んでいるRuGd-1212系への展開を検討している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新たな加圧炉の立ち上げに関しては高圧に関する知識不足と熱電対の高温耐性に欠陥が見つかり,その解決に時間を要した.しかしながら,現在は,ある程度安定して数気圧下で部分溶融法による合成を行う環境を整えることができている. またコロナ禍で研究室の閉鎖が3回あり,コロナ禍以前に比べ研究室での研究活動の時間を確保することが難しくなったことで研究の進捗がやや遅れている.今後は対面授業も再開し大学の研究室での活動に関しても令和3年度よりは幾らか弾力的な運用が期待できるため,今後,一層の研究の進展を図っていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の結果,先行研究で最も安定した超伝導を示したRuEu-1222系に着目し圧力効果による影響を評価した.その結果,高圧下ではRuEu-1222相が分解することが新たに明らかになった.そのため,現在,部分溶融法で構造解析の研究の進んでいるRuGd-1212系への展開を含め検討を進めている.立ち上げに若干の時間を要したものの数気圧の圧力下で1000℃を超える高温で合成できる環境を整えることができたのは大きな利点なので,今後,ルテニウム系銅酸化物の系統的な理解に向け,一層の研究進展を図る. また化学的圧力効果に関してはDyとTbに関する検討がまだまだ不十分であり,より超伝導の強いRuGd-1212単結晶の合成に向け化学・物理の2つの圧力効果を積極的に活用した精密合成によって,この系の超伝導転移温度上昇を目指す.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症対策のための研究室閉鎖が3回あり,感染対策のため従来通りの研究時間の確保が困難となった.その結果,当初の予定に比べ研究がやや遅れたことに起因して次年度使用額が発生した.次年度以降は所属する大学が対面授業を主とすることから当初予定の研究計画の実施に向け予算執行を進める予定である.
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Research Products
(3 results)