2022 Fiscal Year Research-status Report
Structural understanding of magnetic superconductor single crystals of rutheno-cuprates opened by precise synthesis by partial melting
Project/Area Number |
21K04860
|
Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
八巻 和宏 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (90579757)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 超伝導 / 単結晶 / ルテニウム系銅酸化物 / 銅酸化物高温超伝導体 / 固有ジョセフソン接合 / 圧力高温合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は超伝導と磁性が共存し結晶構造内部に超伝導層(S)/(反)強磁性層(F)/超伝導層(S)が原子層のオーダで積層した接合(SFS接合)を含有する新奇固有ジョセフソン接合として期待されるルテニウム系銅酸化物高温超伝導体「単結晶」を申請者が独自に開発してきた「部分溶融法」により合成すること,特に,化学・物理の2つの圧力効果を積極的に活用した精密合成によって,この系の超伝導転移温度を上昇させることである. 今年度は特に物理圧力に注目して実験を進めた.前年度立ち上げたフルテック社製超小型加圧炉FTP-50Kを用いて圧力効果による合成の検証に取り組んだ.その結果,数気圧程度の弱高圧下でRuEu-1222相が分解することが明らかになった.そこで,現在,最も研究の進んでいるRuGd-1212系への展開を検討した. その結果,従来,我々の合成手法においては,30 K程度だった超伝導転移温度のオンセットが圧力効果と焼成温度の最適化によって50 K程度まで上昇することを確認した.これは「我々独自の合成手法である部分溶融法においても,多結晶試料における先行研究と同様に,圧力効果によって,超伝導転移温度が上昇することを実験的に実証した」ことになり非常に大きな進展であった.一方で単結晶粒の大きさに関しては当初数十ミクロン大で従来の先行研究に比べ顕著に小さかったものの,条件の最適化で100ミクロン弱程度まで大型化が可能になってきた.圧力による合成の肯定的な実験結果が徐々に得られる様になっており,今後,より一層の条件の精査を進める.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍で研究室の閉鎖があり,コロナ禍以前に比べ研究室での研究活動の時間を確保することが難しくなったことで研究の進捗がやや遅れている.今後は対面授業も再開し大学の研究室での活動に関しても令和4年度よりは幾らか弾力的な運用が期待できるため,今後,一層の研究の進展を図っていく予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の結果,高圧下ではRuEu-1222相が分解することが新たに明らかになった.そのため,現在,部分溶融法で構造解析の研究の進んでいるRuGd-1212系への展開を含め検討を進めた.立ち上げに時間を要したものの数気圧の圧力下で1000℃を超える高温で合成できる環境を整えることができた.その結果,従来よりも高い超伝導転移温度を有するRuGd-1212系試料が合成できる様になった.今後,ルテニウム系銅酸化物の系統的な理解に向け,超伝導転移温度の圧力依存性などを評価し一層の研究進展を図る. また物理圧力による超伝導転移温度の上昇が確認できたことから,化学的圧力効果,具体的にはDyとTbのGdサイト部分置換に関する検討も今後進める.部分置換は多結晶試料において超伝導転移温度の上昇が確認されており,期待の持てるアプローチである. 以上より,より超伝導の強いルテニウム系銅酸化物単結晶の合成に向け化学・物理の2つの圧力効果を積極的に活用した精密合成を進める.圧力効果の系統的な測定によって,この系の超伝導転移温度を決定する因子の特定を目指す.
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症対策のための研究室閉鎖や研究室メンバーのコロナウィルス罹患があり,感染対策のため従来通りの研究時間の確保が困難となった.その結果,当初の予定に比べ研究がやや遅れたことに起因して次年度使用額が発生した.次年度以降は所属する大学が対面授業を主とすることから当初予定の研究計画の実施に向け予算執行を進める予定である.
|
Research Products
(2 results)