2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of infrared photothermal deflection spectroscopy suitable for defect level evaluation of phase-change memory and selector materials
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21K04861
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
後藤 民浩 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (10311523)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 光熱偏向分光法 / アモルファス半導体 / 局在準位 / 相変化メモリ / 電気スイッチ / カルコゲナイド / 赤外線 / 状態密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
カルコゲナイド系化合物は、相変化メモリ・セレクタや神経細胞を模したニューロモーフィックデバイスの主材料として注目されている。デバイス動作時の抵抗遷移過程を理解し、高性能化・信頼性向上を実現するには、これらの材料の欠陥準位情報が必要不可欠である。そこで本研究では相変化メモリ・セレクタ材料の欠陥準位評価に適した赤外光熱偏向分光法を開発する。 今年度は光熱偏向分光システムの赤外線領域への拡張とノイズの低減を行った。赤外線領域の励起光を得るため、赤外域における発光効率に優れ、信頼性が高く、高寿命なタングステンハロゲンランプを利用した。そして、赤外線対応の各種光学部品(凹面鏡、サファイアレンズ、光学フィルター)を用いた。さらにアモルファスカルコゲナイド薄膜の欠陥を正確に定量評価できるようにシステムの高感度化を行った。信号雑音比の向上には、ノイズの低減が有効である。ノイズの発生要因として光学系の振動、励起光の迷光、プローブレーザーの出力、媒質の対流などが挙げられる。特にモノクロメーターの2次光はスペクトルに大きく影響する。そこで、適切なカットオン波長、高い光学濃度のロングパスフィルターを選択した。これらの対策を着実に行うことにより、従来より3倍程度の高感度化を実現した。そして、基板として用いる石英ガラスの光熱偏向スペクトルを測定し、これまで不明であった赤外線領域の弱光吸収を確認した。今後はシステムの微調整、最適化を進めるとともに、試料作製と評価を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光熱偏向分光システムの赤外線領域に拡張するため、必要な部品の準備、装置の組み立て、標準試料(石英ガラス)による性能評価を実施した。以下に示すように、今年度の研究はおおむね順調に進展している。 赤外線領域の励起光を得るため、タングステンハロゲンランプ、赤外線対応の各種光学部品(凹面鏡、サファイアレンズ、光学フィルター)を準備し、光熱偏向分光システムの光学系を構築した。 システムの高感度化のため、ノイズを低減する各種対策を実施した。用いる回折格子に適したカットオン波長、優れた光遮断性能を有する光学濃度の高いロングパスフィルターをシステムに組み入れた。さらに、出力およびビーム位置安定性に優れた近赤外半導体レーザーと半導体位置検出器を組み合わせて使用した。これらの対策により、従来よりも3倍程度の高感度化を実現した。 これまでに波長5000nmまでの領域において、光熱偏向信号の検出に必要な光強度を確保し、石英ガラス基板の光熱偏向スペクトルの測定に成功した。この結果は、これまで不明であった赤外線領域の微弱光吸収の解明につながる。さらに、半導体薄膜評価時のバックグランドデータとして利用できる。システムの信頼性を確保できたことで、カルコゲナイド薄膜固有の微弱信号の評価が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
光熱偏向分光システムの赤外線領域への拡張と高感度化がおおむね実現できた。今後はシステムの微調整、最適化を進めるとともに、試料作製と評価を進める予定である。試料作製については、製膜の実績があるGe2Sb2Te5薄膜から始める。そして、赤外線領域の評価を行い、システムの有効性を実証する。さらに、得られた光吸収スペクトルを解析し、局在準位密度を定量評価する。この手順を新材料に広げることで、これまで評価が難しかった様々な材料における局在準位の評価が可能となる。 薄膜試料の微弱光吸収を評価する際、石英ガラス基板からの信号をはじめとするバックグランドの取り扱いが課題となる。特に石英ガラスのOH関連の光吸収がバックグランドとして大きいことが分かってきた。対応策として、赤外線領域の吸収の少ない基板の選択、バックグランドを適切に分離・除去する解析方法の開発などが挙げられる。赤外光熱偏向分光法に適した基板の探索は本研究を進める上で極めて重要である。そこで、最優先の課題としてバックグランドを低減できる基板の探索を進める予定である。仮に適した基板の探索が困難な場合、バックグランドを分離・除去する解析方法の開発により、課題の解決につなげる。 薄膜試料の作製の際、特に新材料の場合、製膜条件を確立することが課題となりうる。その場合、新材料に適した製膜技術を適宜選択することで課題に対処する。また、共同研究により新材料の提供を受けることで、課題の解決につながる可能性がある。
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Causes of Carryover |
研究の進捗に合わせて、必要な装置・物品の選定を行っている。装置・物品の選定過程で納期に時間がかかることが判明したため、次年度使用額が発生した。今後は納期の長期化を考慮して装置・物品の選定を進める予定である。
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Research Products
(6 results)