2021 Fiscal Year Research-status Report
擬似血液の高速生成及び高精度レオロジー測定による血球成分の力学特性解析手法の確立
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21K04863
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
平野 太一 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (00401282)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レオロジー測定 / 血液流動特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,電磁回転式非接触トルク印加装置(以下,EMSシステムと称する)による血液の流動特性解析への足がかりとして,濃度・サイズ・力学物性を調整可能な擬似的な血球分散液を自作すること,およびその分散液の粘度がずり速度に依存して変化する様子から分散体の特性を抽出するためのモデル関数を見つけることを目的としている。令和3年度に実施した研究は,主に2つのテーマに大別される。一つは,擬似的な血球としての使用を目指しているマイクロゲル構造体の高スループット生成技術の確立である。本技術においては,ゲル化の主材料であるアルギン酸ナトリウムの水溶液を反応促進のためのカルシウムイオンを溶かした液体が完全に覆うような構造を瞬時に実現できるかどうかで,マイクロゲル生成の可否が分かれる。ここで,液滴の一方がもう一方を完全に覆う状態を実現させるため,カルシウムイオン溶液にのみ表面張力低下の目的でエタノールを混合させるのだが,適切な混合条件の見極めまでは達成できた。また,生成されたマイクロゲル分散液を遠心分離にかけることで体積分率をより正確に判断できること,および遠心分離後のゲル構造体の凝集層に超音波を照射することで,個々のゲルに再分離し良好な分散状態に戻ることを確認した。もう一つのテーマは,ずり速度依存性のより精密なデータ取得を目指すためのEMSシステムによる共軸二重円筒ジオメトリーの検証である。流体シミュレーションによって得られた結果と粘度標準液の測定によって得られたデータを比較し,補正などを考慮せず流動特性解析を実施できるレイノルズ数の領域(上限値)を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の開始年度(2021年4月)に所属先を異動することになり,実験装置を計画通りに使用できない状態が半年ほど続いた。これにより,マイクロゲル構造体の生成についての進行が予定よりやや遅れている。特に,血球成分と同程度以下のサイズを有する構造体の出来映えの良し悪しに予期せぬばらつきが生じているため,安定供給が可能な条件を見出す必要がある。一方で,流体シミュレーションを用いた内部流動の様子の検証に注力したことで,測定ジオメトリーによるせん断速度の差異やレイノルズ数の影響までを考慮した測定可能範囲の確認について,当初の計画以上の成果を得ることができた。この成果により,本研究計画テーマの推進によって得られる知見を,将来的に産業応用に役立てるための足がかりを作ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究成果を踏まえ,血球成分より大きいサイズの構造体生成に関して既に分かっているサンプル条件から,表面張力・粘度・サイズなどのバランスに関する物理的な特徴量を探し出し,それを適応する形で血球と同程度のサイズの構造体生成に関しても安定供給が可能になる条件を策定できると考えている。さらに,当初の計画ではEMSシステムによる各種測定スキームの検証のみを考えていたが,市販の低粘度対応型レオメータを新たに設置し使用することが可能となったため,例えばパラレルプレートのギャップ長を変えながら流動特性を調べることで,構造体サイズと流路幅との相関まで含めた実験的な検証についても実施する予定である。これにより,異なる径の血管を通りながら全身を巡るという,血液の体内循環により近い環境における測定データが得られることになる。
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Causes of Carryover |
次年度では,作成した構造体の硬さ・柔らかさを計測できるような自作のシステムを組み上げる予定であり,超音波センサーに加え各種電子部品などの購入が必要不可欠である。また,市販のレオメータのオプションツールとして平行円板ローターを購入し,上述した流路幅による流動特性の変化を詳細に調べる計画である。さらに,学術的・産業的に本装置の有用性をアピールするために,得られた成果を国内外で発表する予定である。次年度に請求する研究費は,主にマイクロゲル構造体生成と生成物の観察に充当した本年度の研究費と重複するものではなく,本研究の目的を達成するために妥当,かつ必要であると考える。
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