2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of spin density functional method under magnetic/electric field and application to the materials for magnetic device
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21K04864
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小田 竜樹 金沢大学, 数物科学系, 教授 (30272941)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小幡 正雄 金沢大学, 数物科学系, 助教 (10803299)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 磁気異方性エネルギー / スピン軌道相互作用 / スピントロニクス / マルチフェロイクス / ノンコリニアスピン密度汎関数理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、電界印加だけでなく磁界印加できる手法を導入して、局所的な電気分極・磁気分極・原子変位分極の間に内在する交差相関を解析できる手法を開発することが第一であるが、本年度においては、次のような研究実績があった。(1)スピントロニクス素子の界面等でのラシュバ定数の系統的見積もり法について新規の手法を開発した。(2)準粒子自己無撞着GW(QSGW)法での分極計算部分の並列高速化を実施し、酸化物半導体や強磁性形状記憶合金においてその高速化が実現できることを実証した。(3)スピン密度汎関数法(SDFT)の枠組み中で軌道-軌道相互作用(OOI)を考慮して、軌道運動に由来する運動量密度(軌道運動量密度)を電子・スピン密度ともに自己無撞着に決定することを開発した。これにより軌道運動量密度を考慮したスピン密度汎関数法で、軌道運動量密度分布をクラスタ(Fe2),薄膜(Fe単原子層)で検証した。 研究実績(1)で開発した手法は、電気分極層と磁気分極層の界面においてラシュバ定数の見積もりが可能となる一般的なものでありある程度有用であるとの認識に至っている。今後さらに手法の有用性を追求するような研究が必要であると考えられる。 研究実績(2)では、この並列化実施によりMPI並列数を増やして実行することが可能となったことで、より大きな系でのGW近似での電子状態が可能となると考えられる。 研究実績(3)では、平面波部分の軌道運動量密度を特定元素の系(Feのクラスタ、薄膜)で自己無撞着に決定することには成功し、固有状態に対する軌道運動量密度の実空間分布を議論することも可能となった。しかしながら、高精度に決定された軌道磁気モーメントをX線磁気円二色性実験等の測定値と比較し検証することに対して、困難な点が多く見つかり今後この方向性を直ちに発展させる方針を見直さざるを得ない可能性があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
補助事業期間中研究は、計算手法の開発研究と薄膜界面系や強磁性形状記憶合金系等へ応用研究からなる。開発研究ではすでに軌道運動に由来する運動量密度(軌道運動量密度)を電子・スピン密度ともに自己無撞着に決定することを実施している。また準粒子自己無撞着GW法(QSGW法)においては、並列高速化開発が順調に進んでいる。薄膜界面系や強磁性形状記憶合金系等への応用も今後実施を重ねて研究成果へと結び付けることができるのではないかとの見通しもある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進捗は全体としてはおおむね順調であるが、次の点について検討して進めるものととする。 (a)軌道運動量密度を考慮したスピン密度汎関数法の開発について、初期の研究計画においては、フント第二規則との関係などを検討するとしていた。しかしながら、当該年度の開発研究において計算コードの複雑さと、大きな研究成果を上げる見通しの難しさのため、フント第二規則との関係の解析は一旦中断することとする。 (b)今後の研究では応用研究を重点的に推進する。その中で、当初の計画で挙げていた磁性層/誘電体層[PtCoO/ZnO、MnPt/MgOなど]や磁性形状記憶合金中の電子論解析[薄膜Ni2MnGa(10M構造等)]を推進し、開発してきた手法の有用性を実証する。 (c)ノンコリニアスピン密度汎関数法を用いて外部磁界下の電子・磁気状態解析を推進し、開発した手法の有用性を実証する。
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Causes of Carryover |
研究代表者および研究分担者は共に、研究成果の発表が新型コロナ感染症対策によりオンライン開催となったため4件の国内旅費が未使用となった。また論文の執筆作業が若干遅れているため、論文出版用に確保していた経費が未使用となった。令和4年度には、論文出版による費用が使用される予定である。また研究分担者は、令和4年度に本研究内容を用務として含む海外出張が予定されており、海外渡航の補助として使用される計画である。さらに新型コロナ感染症対策により入国が制限されていた、研究協力者である大学院生(留学生)が渡日したため研究発表国内旅費に使用する予定である。
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