2021 Fiscal Year Research-status Report
Bistability of liquid crystal bulk induced by topological surface alignment patterns
Project/Area Number |
21K04867
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
本間 道則 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (90325944)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 液晶 / 双安定 / マイクロラビング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではまず、従来のマイクロラビング処理システムの改良を行い、CADデータから自動で任意の配向パターンを簡便に描画できるシステムの構築を行った。次に、トポロジカル不変量が+1となるラビングパターンを二次元的かつ周期的に分布したパターンを描画し、液晶セルを作製した。マイクロラビングを行った基板には配向膜としてSE2170(日産化学工業)を用い、対向基板には垂直配向膜としてSE7511L(日産化学工業)を採用した。また、2枚の基板間のギャップ(液晶層の厚み)を約10μmとした。作製した液晶セルは、液晶層面内において配向方向が空間的に分布したハイブリッド配向液晶セルと見なすことができる。10 V(1 kHz、正弦波)以上の電圧を印加し、偏光顕微鏡を用いて配向状態の変化の様子を観察したところ、パターン周期に依存して準安定状態が発現することが分かった。すなわち、10μm程度の小さな周期のラビングパターンの場合には双安定性は見られなかったが、周期が100μm程度の大きさになると、電圧の印加による配向状態の遷移が確認された。さらに、温度変化による液晶の相転移によって、転移後の準安定な状態から初期の安定状態に戻ることも分かった。 次に、トポロジカルなラビングパターンによる双安定性の発現機構の解明に向けた考察の布石とするために、マイクロパターン配向を有する液晶セルの配向状態を詳細に考察した。具体的には、逆方向にラビングを行った微細なドメインを交互に形成し、そのドメイン境界と近傍における配向状態を考察した。その結果、得られた配向状態はチルト方向が逆向きになったハイブリッド配向状態が交互に敷き詰められた状態となっていることが分かった。さらに、得られたドメインの境界にはコアのある配向欠陥が生じず、液晶の配向が滑らかに接続した状態(ブロッホウォールのような配向状態)となっていることも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画ではトポロジカル不変量と得られる準安定な配向状態の関係について、実験により考察することを目指していた。しかし、様々なトポロジカル不変量を有する複雑なラビングパターンを描画する必要があったため、本研究ではまず、従来のマイクロラビング処理システムの改良を行い、CADデータから自動で任意の配向パターンを簡便に描画できるシステムの構築を行った。その後、実際に評価セルの作製と電圧印加による配向の遷移実験に移行した。結果として、トポロジカル不変量が+1のラビングパターンについての考察のみに留まった。しかし、実際に作製したマイクロパターン液晶セルの配向状態を詳細に考察したところ、異なるチルト方向のドメイン境界において、ブロッホウォールのような液晶の配向が滑らかに接続した状態となっていることが分かった。このブロッホウォールの形成と消滅過程が準安定状態の発現とその安定性を議論する上で鍵となると考えられ、最終的な双安定性の発現メカニズムの解明に向けた重要な足がかりが得られたという観点において進展が見られたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度はトポロジカル不変量が+1となるラビングパターンを有する液晶セルについてのみ考察した。今後は新たに構築したマイクロラビング処理システムを用いて、異なるトポロジカル不変量を有する様々なラビングパターンを導入し、準安定状態の実現可能性について考察する。さらに、液晶層の厚み、パターンの周期などの液晶セルのパラメータによって、得られる準安定状態の安定性がどのような影響を受けるのかについて実験により考察する。以上より、準安定状態の誘起とその安定性を確保するために適したラビングパターンとセル構造の設計方針の検討を行う。
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