2023 Fiscal Year Research-status Report
自己集合場の設計によるソフトマテリアルの超精密分子配向制御と機能開発
Project/Area Number |
21K04877
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
梶谷 孝 東京工業大学, オープンファシリティセンター, 上席技術専門員 (20469927)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ソフトマテリアル / 自己集合 / 分子配向 / シングルドメイン / 音波浮遊 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者らが見出した、世界的にも歴史的にも類を見ない新たな性質を示すシングルドメインソフトマテリアルの構造形成を、「自己集合場」を用いることで種々のソフトマテリアルに広く適用するための手法の開発(課題1)と、それによって得られる物質を用いた高機能性材料の開発(課題2)を通じ、ソフトマターの基礎科学に新たなフロンティアを築くことを目的とする。課題1では、自己集合場として基板(固体)界面が存在せず、空気界面のみを作り出すことの出来る音波浮遊溶融技術を用い、自発的超精密分子配向制御やシングルドメイン形成を実現する液晶・高分子物質の分子ライブラリを構築するとともに、普遍的手法やアプローチの開拓を行う。課題2では、ソフトマテリアルの超精密配向制御を有機・高分子合成に応用するための反応場の設計に展開し、既存の物質では得られない新たな分子集合形態や高配向性を示す材料を創製することで、それらの材料による特異な光・電子機能発現を目指す。 令和5年度は令和4年度までに実施した課題1および課題2の結果をさらに発展させた。具体的には以下について取り組んだ。これまでの研究では溶融状態での高配向ソフトマテリアルの創製を目指してきたが、実際の有機材料合成では主に溶液中での反応が用いられる。そこで令和5年度は、様々な溶液中での反応を行うための溶媒の特性を知るために、研究代表者が管理するX線装置を用いたin-situ XRD測定により各種有機溶媒が形成する液滴の形態および構造を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は前年度までの課題1および課題2の検討をさらに発展させて、有機液滴の形態と分子集合構造を評価した。具体的には以下について取り組んだ。これまでの研究では溶融状態での高配向ソフトマテリアルの創製を目指してきたが、実際の有機材料合成では主に溶液中での反応が用いられる。そこで令和5年度は、様々な溶液中での反応を行うための溶媒の特性を知るために、各種有機溶媒が形成する液滴の形態および構造を研究代表者が管理するX線装置を用いたin-situ XRD測定により検討した。その結果、いくつかの芳香族有機溶媒では液滴表面での分子配向が制御されていることが明らかとなった。他方、脂肪族有機溶媒ではそのような構造的特徴は観測されなかった。これらの検討から、「自己集合場」を使ったシングルドメイン構造を形成し、高機能な材料を創製するための反応場の確立および、物性評価を目指した研究を展開しており、論文等への外部発表に向けて準備を進めている。 したがって、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、課題1および課題2で得られた成果のまとめとして、論文等の外部発信を進める。加えて、構造制御にもとづく物性の制御についても議論する。特に、分子配向の影響を強く受ける物性(力学、電子、光学)を中心に広く検討する。 上記物性評価の結果についても外部発信を行う。
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Causes of Carryover |
令和5年度までに進めてきた研究について論文等での発表を予定しているが、追加測定および物性評価などを令和6年度に実施することで、より精緻に研究目的を達成するための費用を計上した。
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