2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of a thin film growth circulation-cycle-system using selective elemental ion beam
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21K04885
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
野島 雅 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 講師 (50366449)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 質量分離 / 静電噴霧 / 薄膜形成 / 電界スプレーイオン化 / マテリアルインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、静電噴霧堆積(ESD)法を成膜プロセスとして用いて、回転電場質量分離(REF-MS)による元素選択型ものづくり手法を実現する。ここで、"元素種を周波数変調のみで選択しながらESD薄膜形成ができるだろうか?"が本研究の求める「問い」である。すなわち、(1)溶液金属イオン源を作成し、真空中静電噴霧イオン(V-ESI)を形成する。(2)REF-MSによる質量分離により、イオンビーム中の元素を薄膜形成レシピに従って選択する。(3)ESD形成された薄膜物性をマテリアル情報として元素材料レシピに還元することで循環サイクルが成立する。REF-MSによる質量分離は、ESDにおける薄膜形成レシピを元素固有周波数のみで与えることができる。 本研究は、情報処理によって材料機能発現が予見された薄膜形成レシピを周波数変調のみで再現することのできる循環サイクル型薄膜形成技術の構築を目指している。昨年度においては、株式会社Humanix Cellomicsと内径:40 m外径:1 mmの新規V-ESIチップを開発した。これにより異なる濃度のCo金属溶液・周波数によって特異な質量イメージが得られた。特に、0.1 M Co(NO3)2・6H20溶液の350 kHzにおける質量分離パターンにおいて、光軸付近にSi基板を設置したところ59Co含む[59Co+ (DEGBE)4]が円環状に局在することが確認された。また、回転電場質量分離部のイオン光学系に対するエラーファクターとその寄与率を試算した。回転電場電極出力の誤差が支配的であり、最終アンプおよび周辺回路の実装によって相対誤差を標準偏差0.5パーセント以内に低減できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述にて開発したV-ESIチップは、外径1 mmのガラスキャピラリー管を引き伸ばすことで先端40 umに加工している。チップ全体に白金コートによって導電性を付与している。V-ESI条件においては、真空雰囲気から最大4atmに溶媒に圧力を加えるため、耐圧試験を繰り返し行った。本研究では、磁気記録媒体の成膜を目的としたCo金属元素を含むCo(NO3)2・6H20を溶質とした2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール(DEGBE)とエタノール(4:1)溶液を溶液金属イオンビーム源として用いたこれによって、異なる濃度のCo金属溶液(0,0.01,0.05,0.1M)・周波数(300, 350, 400 kHz)によって特異な質量イメージが得られた。0.1 M Co(NO3)2・6H20溶液の350 kHzにおける質量分離パターンにおいて、光軸付近にSi基板を設置して全吸収電流2-3 pA・約92 時間Si基板に照射した。その後、プラズマクリーナー(ibss Group社 GV10x DS Asher)を用いて30 Wで5分間表面処理を行い、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS(ULVAC-PHI社 PHI nanoTOFⅡ 一次イオンビーム:Bi+))によりSi基板の表面の元素組成をイメージングした(図3)。59Co+の二次イオンイメージでは、回転電場形成による直径2.0 mm円環パターンが確認された。この際、V-ESIチップとSi基板の相対位置の操作ができないため円環パターンが左下方向に膨らんでいる。これは、両方の相対位置のドリフト補正機構を開発することで改善できる。今後の開発目標の一つとして挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、静電噴霧堆積(ESD)法を成膜プロセスとして用いて、回転電場質量分離(REF-MS)による元素選択型ものづくり手法を目的として最適なV-ESIチップを開発した。異なる濃度のCo金属溶液・周波数によって特異な質量イメージが得られた。350 kHzにおける質量分離パターンを光軸付近にSi基板を設置してSi基板に照射した。照射した部位のTOF-SIMSイメージングを行うことによって9Co+の円環イメージが得られた。本実験において59Co+を含む[59Co+ (DEGBE)4]+の固有周波数:f = 350 kHzが、59Co+を呼び出すためのパラメータの一つとして定義することができる。この際、エレクトロニクスの精度が円環パターンの安定性および質量分解能に影響を与える。本研究においては、REF-MSの最終アンプおよび周辺回路の実装によって相対誤差を標準偏差±0.5 %以内に低減できた。このようなパラメータ構築は、今後の元素選択型・集束イオンビーム(FIB)の開発において重要であると結論する。 今後は、Co, Cu, Ni三元系材料を目的とした元素選択型FIBのパラメータ構築のためCo(NO3)2 ,Cu(NO3)2 ,Ni(NO3)2混合溶液の質量イメージを取得する。また、質量イメージにおけるV-ESIチップとSi基板の相対位置のドリフト補正機構を開発する。
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Causes of Carryover |
当該年度においては、原子レベルでのキャラクタリゼーションに関する国際会議2021が沖縄にて開催予定であったため予算を計上したが、コロナ渦における遠隔開催となった。したがって、旅費の支出を原子レベルでのキャラクタリゼーションに関する国際会議2022年における旅費に繰り越すことになった。
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Research Products
(4 results)