2023 Fiscal Year Annual Research Report
あらゆる真空装置をゲッターポンプに変える小型製膜装置の開発と膜内排気機構の解明
Project/Area Number |
21K04891
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
谷本 育律 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授 (60311130)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超高真空 / 非蒸発型ゲッターコーティング / マグネトロンスパッタ / 合金ターゲット |
Outline of Annual Research Achievements |
粒子加速器や電子顕微鏡,半導体製造装置などの真空装置の性能を向上させるためには,装置内の残留気体分子を効率良く排気することが不可欠である。すなわち,短時間で超高真空あるいは極高真空を実現し,低い到達圧力を安定に維持することが求められている。そのための究極的な手段として,装置の内面を真空ポンプとして利用する非蒸発型ゲッター(Non-Evaporable Getter; NEG)コーティングの開発が国内外で進められている。 本研究課題ではNEGコーティングを多様な装置に応用させることを目的として,フランジマウント型の小型マグネトロンスパッタ成膜装置の研究開発を行った。本装置の最大の特長は,NEG材料として高品質なTi-Zr-V合金を任意形状のスパッタターゲットに用いることで,多様な形状の真空装置に高い真空性能をもつNEGコーティングを施すことである。 2023年度は,前年度より開発を進めてきた新しい熱間鍛造プロセスをTi-Zr-V合金ターゲット製造に応用し,多様な形状に対して高品質(高純度,高密度)かつ低コスト(高い歩留まり)でのTi-Zr-V合金製造手法を確立した。 具体的には,鍛造プロセス中の熱的条件および応力の最適化が有効であることを実証し,Ti-Zr-Vの鍛造過程で発生する割れの問題を克服した。 さらに,NEGコーティングの真空性能を向上させるため,成膜パラメータ(放電ガス圧力,プラズマ電位,磁場分布など)の最適化を行った。その際,他の成膜条件を安定に保つようにガス導入や排気ラインを改良を行った。その結果,本小型成膜装置を用いたNEGコーティングにより10-9 Paの超高真空が実現できることを実証した。 今後も本研究開発を継続する予定であり,得られたNEG膜に対して表面分析を応用し,高い排気性能や低いガス放出性能を分子のダイナミクスで説明することを目指す。
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Remarks |
本研究課題で開発したTi-Zr-V合金ターゲットをCERNのHL-LHC計画などにおけるNEGコーティング技術に応用させることを目指して共同研究を行った。
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