2021 Fiscal Year Research-status Report
金属―水素系の局所構造解析:結晶中に無秩序分布する局所格子膨張の直接観察
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21K04907
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
伊藤 恵司 岡山大学, 教育学域, 教授 (80324713)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中性子回折 / X線回折 / 水素吸蔵合金 / 格子膨張 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,α-VDx結晶(x = 0.7~0.8)における(重)水素原子周囲の局所格子膨張を2体分布関数解析法により直接観察することである。2体分布関数は平均かつ1次元情報であるため,試料のクオリティーが重要となる。すなわち,単相試料であることが必須であり,第2相の混入は致命的となる。そこで,まずは高純度の水素化試料の合成を試みた。そのために,水素化装置を作製するとともに,ホスト金属試料として最適な高純度バナジウム粉末試料を選定した。高温真空下でバナジウム粉末の活性化処理を行い,高重度重水素ガス(99.999%)と直接反応させて水素化を行った。水素吸蔵前後の圧力変化から吸蔵水素量を求めた。X線回折実験(Cuターゲット使用)により結晶相の確認をおこなった。活性化処理条件や水素化温度等の試行錯誤の結果,3種類の試料の作製に成功した。これらの試料について,中性子回折実験を行った。中性子回折実験は,J-PARC物質・生命科学実験施設内中性子BL21に設置されている中性子全散乱装置を用いて行われた。得られた散乱強度のデータについて吸収や多重散乱等の補正及び規格化を行うことにより構造因子を得た.実空間の情報である2体分布関数は,構造因子をフーリエ変換することにより得た。得られた2体分布関数の0.17 nm付近にバナジウムと重水素の相関ピークが観察された。このバナジウム―重水素の距離情報は本研究の目的達成に不可欠な情報である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高純度試料の作製に成功し,それらの中性子回折データの取得が終了している。中性子回折実験の結果から,本研究を進めるうえで不可欠なバナジウム―重水素の距離情報が得られており,順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
中性子回折実験に用いたものと同じ試料についてX線回折実験を行う予定である。X線回折データについても2体分布関数解析を行い,バナジウム原子相関の局所構造情報を得る予定である。
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Causes of Carryover |
中性子回折実験の実験回数が減ったため,実験旅費に残額が生じた。次年度には,追加の中性子回折実験やX線回折実験の旅費として使用する予定である
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