2022 Fiscal Year Research-status Report
金属―水素系の局所構造解析:結晶中に無秩序分布する局所格子膨張の直接観察
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21K04907
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
伊藤 恵司 岡山大学, 教育学域, 教授 (80324713)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中性子回折 / X線回折 / 格子膨張 / 水素吸蔵 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度には,重水素濃度の異なる3種類の試料(D/V=0.65,0.70,0.75)を作製し,中性子回折実験を行った。その結果,2体分布関数の0.17 nm付近にバナジウムと重水素の相関ピークが観察され,重水素濃度の増加に伴いバナジウム―重水素距離が大きくなることが明らかになった。今年度は,同一試料について,放射光X線回折実験を行い,ホストバナジウム構造の詳細解析を行った。X線回折実験は,BL04B2ランダム系ステーションの2軸回折計を用いて行われた。得られたデータをバックグラウンド補正,吸収補正および規格化を行い,構造因子を得た。構造因子をフーリエ変換することにより実空間の情報である2体分布関数を求めた。さらに,中性子回折実験の再測定を行い,データの再現性を確認した。 得られた2体分布関数には,ホストバナジウムの体心立方構造に起因するピークがいくつか観察された。第1ピークはバナジウム原子の最隣接相関,第2ピークは格子定数に相当する。重水素濃度による第1ピークと第2ピーク位置の変化に大きな違いが観察され,この結果は,重水素吸蔵による格子膨張が不均一であり,水素が存在するサイト周囲の局所的格子膨張と関係していると考えられる。今後は,これらのX線データや中性子回折によって得られたバナジウム―重水素距離情報について,リバースモンテカルロ法や分子動力学法等のシミュレーションを利用することにより,水素原子周囲の局所的格子膨張の定量的解析を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料作製および高精度な中性子回折・X線回折データの取得に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた回折実験データに基づいて,シミュレーションを利用することにより,水素原子周囲の局所的格子膨張の定量的解析を試みる。
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Causes of Carryover |
回折実験の回数が予定よりも少なかったため。次年度はさらに回折実験を実施し,より広い重水素濃度範囲での実験を実施する。
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