2021 Fiscal Year Research-status Report
エネルギー関連機能性多元系物質の結晶育成機構および電気輸送特性の解明
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21K04909
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
宮川 宣明 東京理科大学, 理学部第一部応用物理学科, 教授 (20246680)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 透明導電性半導体 / 加圧式光学フローティングゾーン法 / 大型単結晶 / 異方的電気伝導特性 / 光学バンドギャップ / 強電子相関系超伝導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、エネルギー問題に貢献できる可能性を秘めた幾つかの多元化合物に焦点をあて、良質な(単)結晶を育成し、その輸送機構を明らかにすることを目的としている。特に、透明導電性半導体に着目し、その単結晶育成の良質化条件を確立し、そして基礎的な物性を評価することを通して、輸送機構を解明する。付け加えて幾つかの強電子相関系超伝導体の結晶育成およびその物性評価を行うことにより超伝導臨界温度の高温化の要因を探究する。 初年度は、透明導電性半導体に対しては、バルク単結晶特性がほとんど調べられていないインコグルーエント溶融性状を有した(InGaO3)m(ZnO)n (IGZO-mn)の良質なバルク単結晶育成条件の確立およびその評価、そして電気伝導機構の解明を目指した研究を行った。 ここでIGZO単結晶育成においては、我々がIGZO-11大型単結晶育成で見出した圧力印加型OFZ法を用い、上下ロッドの回転数、フィードロッドの組成比、育成時の圧力、種結晶の利用を育成パラメータとして良質化の条件を調べ、IGZO-11の他にIGZO-12,-13の大型バルク単結晶育成条件を確立できた。さらに電気伝導度、移動度、キャリア数、光学バンドギャップのアニール効果を調べ、これらのZnO層数依存性を明らかにできた。強電子相関系超伝導体に対してはNi系酸化物超伝導体((Nd,Sr)NiO2の有機金属化合物分解法(MOD法)による薄膜育成および遷移金属カルコゲナイド(TMChx)のCDT法における単結晶育成および物性評価を行った。Ni系酸化物においては、NdNiO3のエピタキシャル薄膜の育成条件を確立し、TMChにおいては、まだ研究がほとんど報告されていないHfTe3の大型単結晶育成条件を確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、良質な大型単結晶育成研究がほとんど進んでいないIGZO-mnの基礎物性(電気伝導・熱輸送)特性を明らかにすることにより、この物質のデバイス応用への真のポテンシャルを検証し、エネルギー枯渇問題に貢献しようとするものである。そのためには、まず大型の良質なバルク単結晶が必要不可欠となるが、初年度にはIGZO-11の良質化のみならず、IGZO-12,IGZO-13の良質な単結晶育成条件を確立でき、異方的電気伝導度のZnO層数依存性を明らかにできた。付け加えて、異方的な電気輸送特性の機構解明および異方度の制御法確立のために、当初予定していなかったIn2O3(ZnO)3の単結晶育成研究も進め、上記と同様の手法で育成できる目星がついた。さらに熱電素子に対するポテンシャルを検証するための予備データも得られてきている。よって、透明導電性半導体研究においては当初の予定以上に進展している。 しかし、Ni系酸化物の薄膜合成においては、目的物質の前駆体である(Nd,Sr)NiO3のエピタキシャル成長には成功したものの、まだアニール条件の確立には至っていない。そこで、完全なNi1+の状態を作る困難さを解決するために、電気二重層型トランジスタを利用し、キャリア数コントロールした場合に超伝導化できるかどうか調べる研究の準備を始めた。よって、総合的に判断すると順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
IGZO-11~-13までの良質な大型単結晶の育成は成功したが、空間群の異なるZnO層数が偶数の場合の結晶はまだIGZO-12のみであるため、IGZO-14の単結晶育成にとり組む。それと並行して、これらの電気伝導特性、熱輸送特性を詳細に調べていく。更に、研究準備を始めたIn2O3(ZnO)nの良質なバルク単結晶育成条件の確立と共にIn2-xGaxO3(ZnO)3の単結晶育成にも取り組み、その輸送特性および光学バンドギャップ測定を行い、IGZO関連物質の応用利用に対するポテンシャルを検証していく。付け加えて、ホモロガス物質であるIGZO-mnにおいてまだ実現できていないIGZO-31の新物質の合成にもチャレンジする。 Ni系超伝導体研究においては、酸素還元アニール条件を確立するとともに、仮に十分な還元ができなかった場合に対して(Nd,Sr)NiO3、(Nd,Sr)NiO2.5に対する電界効果によるキャリア注入効果も調べていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ感染拡大していることもあり、学会、国際会議などへの出張に行けず、旅費を必要としなくなったことが原因である。この分は、物質合成に関わる原材料費などに使用する予定である。
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