2021 Fiscal Year Research-status Report
Fine Particle Synthesis by Multiple Nucleation Reaction using Microbubbles
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21K04911
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Research Institution | Hachinohe National College of Technology |
Principal Investigator |
門磨 義浩 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90431460)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マイクロバブル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、次世代高エネルギー密度二次電池の実現に向けた電極材料の開発を行うものである。そのための電極反応の効率向上の方法のひとつとして、粒子の微細化による反応場の増大に注目した。これまで微細粒子の合成方法は様々な方法が提案されてきたが、本研究課題では、低コストで簡便なマイクロバブルを用いたマンガン-チタン系酸化物の合成に着目した。マイクロバブルを用いることで、同時多発的に核生成反応を起こし、材料のナノポーラス化を狙ったものである。 昨年度(1年目)は、マイクロバブルを用いた材料の合成とその電極特性評価を行い、合成方法の検討を行うことが当初の予定であった。しかしながら、コロナ禍の影響で電気化学測定システムの納期が年度末になってしまったため、試料の合成を中心に研究課題を実施した。 まず、合成条件を最適化するために合成時間や出発組成を変更して合成を行った。X線構造解析やFE-SEMによる観察の結果、目的の試料の合成は確認できたものの合成時間が試料の構造に大きく影響することがわかった。室温での合成では結晶性が低いため、加温や合成条件の見直しが必要であることが示唆された。 これらの試料について、コイン型セルを用いて、定電流充放電試験を行った。その結果、従来法に近い結晶性が得られた試料では、良好な充放電特性を示すことがわかった。また、サイクルに伴う容量減少はあるもののレート特性については改善する傾向がみられた。 今後は、電気化学測定システムによる電極特性の解析を詳細に行い、その結果を合成条件にフィードバックしながら試行錯誤を行うことで、次世代高エネルギー密度二次電池実現に向けた高機能電極材料の合成方法を提案することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度(1年目)は、マイクロバブルを用いた材料の合成とその電極特性評価を行い、合成方法の検討を行うことが当初の予定であったが、電気化学測定システムの導入が年度末となってしまったために、詳細な電気化学特性(電極特性)の解析を行うことが出来なかった。そのため、電気化学測定の結果をうまく合成条件にフィードバックすることができなかった。そこで、合成の際の条件のふり幅を当初予定より大きくするなどして、試料合成に重点を置いて研究を行った。 その結果、電極材料の合成に関しては、合成時間が結晶性に大きく影響を及ぼすことがわかり、合成時間のふり幅を大きくして検討する必要があることがわかった。また、低音(室温)で合成を行っているため、得られた試料の結晶性が低いことがわかった。そのため、ある程度の加温も検討していく必要がことが示唆された。また、溶液法ではホランダイト型構造に特有の針状晶が凝集しウニ状の二次粒子を形成するが、本研究課題の方法では、針状晶の長軸方向(c軸方向)が短いためかウニ状ではなく、凹凸のある球状の二次粒子に近い形状をしていた。長軸方向が短いことは、結晶内でのリチウムイオンの拡散距離が短縮されることになり、電極特性改善の可能性が示唆された。 定電流充放電試験の結果より、サイクル特性(寿命特性)については充放電サイクルに伴う容量減少はみられるものの、レート特性(入出力特性)については改善する傾向がみられ、上述の結晶の状態の変化が要因と考えられた。一方で、サイクル特性向上には充放電サイクル時の結晶構造の安定性、すなわち、結晶性の向上が必要であり、最適な合成条件を見つける必要性が改めて示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、昨年度(1年目)行うことが出来なった合成試料の電気化学特性評価を行い、解析したのち、その結果をフィードバックして合成方法の最適化を行う。電気化学特性を詳細に解析することにより、改善が必要な特性を見出し、その特性を向上させるべく合成条件の見直しを行う。また、マンガンとチタンの組成の影響についても検討し、物理化学的および電気化学的特性の組成依存性について検討をおこなう。また、マイクロバブルを用いた異なる実験系での合成についても検討しており、その手法の有用性について検討を行う。現状は酸化剤を溶液中に溶かし込んで利用しているが、これを気相にて行うことを検討したものである。反応そのものが十分に進行するのかおよび目的物が得られた場合の物性の違いなどを検討する。 電気化学測定に関しては、電極特性について詳細に検討を行ったのち、空気電池としての特性評価を行う予定である。空気電池の空気極側の電極では、いわゆる触媒的な反応が必要であるため、それに合わせた評価を行う予定である。それについては、今年度(2年目)に導入予定の電気化学測定装置を用いて行う予定である。 空気電池用電極材料としての合成条件が、これまでの合成条件と大きく異なる場合は、改めて合成条件の範囲を広げて、合成条件を検討する。その際に、必要な物性の知見が得られれば、今後の研究における合成指針の助けとなることが期待できる。 これらの実験を遂行し、最終的には、電気化学的評価結果を反映し、マイクロバブルを用いた電極材料合成手法の確立および合成条件の提案を目指す。電極材料のみならず、微細粒子の合成方法として確立できれば、他の分野への応用も期待できる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により昨年度(1年目)の購入した電気化学測定システムの納期が年度末になってしまい。当初予定では秋頃から実施する予定であった詳細な電気化学特性評価が行えなかった。そのため、一部の研究および予算を今年度(2年目)以降に実施することにした。2年目以降の前倒し可能な研究について、前倒したものもあるが、予算面では一部の予算を繰り越す形となった。 今回、繰り越した研究については、今年度(2年目)の初頭に実施し、それに合わせて該当する予算についても消化する予定である。
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