2022 Fiscal Year Research-status Report
Bi系化合物半導体量子ドットによる完全温度無依存レーザ
Project/Area Number |
21K04914
|
Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
赤羽 浩一 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワーク研究所フォトニックICT研究センター, 室長 (50359072)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富永 依里子 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 准教授 (40634936)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 量子ドット / Bi系化合物半導体 / 半導体レーザ / 分子線エピタキシー / ドロップレット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では完全に温度無依存な半導体レーザ実現のため、Bi系半導体量子ドットの形成法を確立することを目的とする。2022年度はBiを照射した量子ドットレーザの作製とその特性評価、並びにGaAs系材料におけるBiドロップレットの結晶化(ドロップレットエピタキシー)方法の研究を行った。 InP系材料におけるBi照射量子ドットレーザの作製では少量のBi混入の期待できる温度領域(380℃)で量子ドットレーザを作製し、レーザ発振を確認した。作製した量子ドットレーザの発振波長の温度変化(20℃~75℃の温度領域)を評価したところ、Biの照射を行っていない量子ドットレーザの波長変化27nmに比べて、Biを照射した量子ドットレーザでは9nmの波長変化となり、発振波長の温度変化の大幅な低減に成功した。しかしながら、この際のBiの混入量は1%以下であり、波長シフト抑制の詳しいメカニズム解明は今後の課題である。 GaAs系材料におけるBi混入InAs量子ドットの作製法の確立の研究では、出発物質をBiドロップレットとし、これにInおよびAsを供給することでInAsBi量子ドット形成を試みた。Biドロップレットの形成では基板温度を250℃以下に下げることにより、Biドロップレットを形成することに成功した。その後のIn照射、As照射についても検討を行い、一部InAsBiとして結晶化している傾向が見られたが、Biが単体で結晶化している部分も残り、完全なInAsBi結晶の形成には至らなかった。これとは別にInAsBi量子井戸をTEM観察中に加熱する実験を行ったが、ここでは最初量子井戸として膜構造であったものが量子ドットのように3次元的なナノ構造に変化する現象が確認された。得られたナノ構造にBiがどの程度含まれているかや、ウエハレベルで同じ現象が形成されるかを今後調べる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Biを用いた半導体レーザの発振波長の温度無依存化として既に一定の成果が得られている。ただし、現象としては未解明な部分が多く、また、更なる性能向上を目指して最終年度となる2023年度も研究を進める予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
ごく微量のBi混入量によっても量子ドットレーザの発振波長の温度変化が抑制された結果は予想外であり、波長シフト抑制のメカニズムの解明はより波長シフトの小さい半導体レーザの開発に必要であると考えている。成長条件の異なるレーザの評価や、レーザの動作条件の詳細な検討などを行うことにより、これを解明する予定である。また、ドロップレットエピタキシーやアニールによる2次元ナノ構造の3次元化に関する研究も、高濃度Biを含む量子ドットを形成する手法になりうるため、引き続き量子ドットの形成メカニズム解明のための研究を行う。
|
Causes of Carryover |
本年度実施する予定だった物品、消耗品費について、想定より安く調達できたため次年度使用額が生じた。次年度は計測機器等を充実させ、研究の加速に使用する予定である。
|