2021 Fiscal Year Research-status Report
フォトクロミズムとナノ光学の融合による階層的光相関の自発的形成の基礎と応用
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21K04925
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
内山 和治 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (70538165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成瀬 誠 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (20323529)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近接場光学 / フォトクロミズム / 記憶構造 / ナノフォトクロミズム |
Outline of Annual Research Achievements |
光で色が変わるフォトクロミズムによる記憶とナノスケールにおける光伝達を合わせたナノフォトクロミズムにもとづき、ミクロに形成されるナノサイズの光伝達構造をマクロにおいて有用な機能へ展開することを目標とする。そのため、フォトクロミック微結晶の2次元配列構造(以下、微結晶アレイ、と呼ぶ)を導入し、独自の多点ナノ光計測を駆使して、フォトクロミズムのミクロ・マクロ光相関を解明し、機能応用を見据えた重要な基礎的知見を獲得する。 研究初年度の本年度は、第一の目標である「動的光伝達構造(機能の基礎ブロック)の形成・微視的評価計測と新規理論構築」に着手した。光近接場相互作用に適したサイズの微結晶の作製方法を確立し、ガラス基板への塗布条件により微結晶の密度を調節可能であることを確認した。また光異性化観察用顕微装置を立ち上げ、局所光異性化用プローブと合わせてミクロ・マクロ同時計測を行う準備を完了した。また、動的光伝達構造の微視的評価計測を、多点ナノ光計測系で計測する手法の検討を行い、同一物質の単結晶試料において計測試行を行った。 さらに、電子特性に着目した新規計測手法を実証し、動的光伝達構造の計測に成功した。計測評価に当たり、ナノサイズの微結晶の光異性化状態を壊さずに動的光伝達経路を計測する手法が重要であることが分かった。そのため、ナノ光計測と並行してナノ電子計測を行うことを着想し、ジアリールエテンの一種において光異性化に伴う電子特性の変化を捉えた。この成果を起点とし、局所光異性化を加えた微結晶アレイの電子特性変化を2次元的に計測し、動的経路形成の結果生まれた光異性化経路と見られる構造の計測に成功した。 理論においても、微結晶の光異性化による構造変化を含んだ励起輸送モデルを試作し、微結晶間の励起輸送と光異性化に基づく自発的な経路形成の素過程の再現に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の第一目標である「動的光伝達構造(機能の基礎ブロック)の形成・微視的評価計測と新規理論構築」に着手し、10 ~ 1000 nmの間でサイズを調節可能なフォトクロミック微結晶からなる2次元配列構造の作製方法を確立し、顕微光学系によるマクロ計測、プローブ顕微鏡によるミクロ計測系の構築も順調に進捗した。フォトクロミック微結晶試料について、蛍光オンオフ機能を有する微結晶や、異種分子の混合微結晶なども検討し、今後の研究展開に有用な知見を得た。理論においても、光異性化による構造変化を含んだ基礎的な励起輸送モデルを試作し、自発的な経路形成の素過程を見出した。 研究の過程で、ナノ電子特性の評価による動的光伝達構造の非破壊的評価手法を発見し、観察手法、機能構造形成について当初計画以上の重要な発展を得た。着色と脱色時の電子特性の変化を試料表面上で2次元的に計測し、光異性化のナノスケールでの伝達と対応するとみられる経路の観察に成功した。光異性化状態を壊さない動的光伝達構造の微視的評価計測手法を得たと同時に、動的光伝達と動的電子伝達を併せ持った機能構造の発現とその評価へと発展する基盤を得た。 フォトクロミック微結晶試料についてフランスの研究機関と共同研究を推進しており、本研究に関連して、光トラップ技術を活用した微結晶アレイの動的形成について検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目以降は、初年度に基礎を確立した構造形成手法と評価方法を駆使し、動的光伝達構造の確率的性質の計測を各種条件で行い、経路のパターン数や形成の履歴依存を調べる。理論については、光異性化を盛り込んだモデルを微結晶アレイ構造に適用して、経路形成の数値シミュレーションを行いその結果を構造作製に反映させる。以上にもとづき、第2の目標である「フォトクロミズムにおける動的光伝達構造のミクロからマクロへの階層的接続」へと研究を展開する。階層的接続を評価するために、これまでの準備に基づいてミクロ・マクロ同時計測系を立ち上げ、ナノスケールでの確率的性質をマクロでの光学応答として取り出すシステムを構築する。試料構造としては、数100個の微結晶からなる集団を1単位とする階層的微結晶アレイから実験を着手し、計測・シミュレーションに基づいて構造を変更する。 初年度に新規に見出した光異性化と電子特性の関係にもとづく計測・設計は、上記研究を進める上で、常時活用していく。ミクロからマクロへの階層的接続においても、光学特性のみならず、電子特性としての接続も検討する。
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Causes of Carryover |
R3年度に計上した旅費が、新型コロナウイルスの流行を受けた学会のオンライン開催により不要になったこと、光学部品・消耗品の購入内容に変更が生じたこと、等の理由で次年度使用額が生じた。研究は順調に進捗しており、R4年度以降の成果発表や光学系構築に引き続き有効に使用する。
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