2021 Fiscal Year Research-status Report
光取り出し効率の向上による光励起型短波長遠赤外レーザーの高性能化
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21K04932
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
中山 和也 中部大学, 工学部, 准教授 (40434584)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 遠赤外レーザー / 炭酸ガスレーザー / レーザー出力鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
核融合プラズマ研究の分野では、プラズマ中の電子密度や磁場分布を計測するために、素粒子物理学の実験分野では、ニュートリノ崩壊光子検出器の開発のために、波長50 μm帯(周波数6 THz帯)の短波長遠赤外レーザーが強く求められている。しかし、この波長帯域で高出力かつシングルモード発振可能な遠赤外レーザーは未だ実現できていない。そこで本研究では、(1)アウトプットカップラーの光取り出し効率の向上による高出力化と(2)レーザー管の細径化によるシングルモード化を並行して進める。波長50 μm帯の遠赤外レーザーに対する高効率の光取り出し技術および横モードの制御技術を確立し、高性能の短波長遠赤外レーザーを実現する。本研究により得られる結果は、遠赤外レーザー光を必要とする多くの研究者にとって重要であり、各分野の学術研究の向上に大いに役立つものである。 本研究では、光励起の導波管型遠赤外レーザー装置を用いて、CO2レーザー励起で発振する波長48 μm、57 μmのCH3ODレーザーの高出力化とシングルモード化を試みる。アウトプットカップラーの最適化による出力増加の効果、レーザー管の細径化による高次横モードの抑制を明らかにするために、(1)薄膜の光学定数測定、(2)アウトプットカップラーの設計・製作、(3)レーザー管の設計・製作、(4)レーザー発振特性の測定、(5)ビーム品質の測定を行う。 当該年度は、アウトプットカップラー(レーザー出力鏡)の設計・製作とレーザー管(導波管)の設計・製作を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を達成するために現在までに、アウトプットカップラーとレーザー管の設計・製作を行った。 アウトプットカップラーには、励起レーザー光を反射し、遠赤外レーザー光を透過する誘電体多層膜のコーティングが必要となる。実際の製作にあたっては、中赤外~遠赤外領域用であるため、コーティングの面積が大きく、膜厚が厚く、層数も多くなることから薄膜の耐久性に懸念があった。多層膜を設計するには、薄膜の光学定数が必要となるが、遠赤外領域ではあまり知られていない。そこで今回は、バルク形状の光学定数を用いて設計を行ったため、設計値と実測値とのズレも懸念された。製作したアウトプットカップラーに対して測定した励起レーザー光と遠赤外レーザー光の反射率と透過率は、設計値と±5 %以内の精度でよく一致していた。レーザー装置に取り付け、レーザー発振試験を行った結果、従来と比べて、約45 %の出力増加が確認できた。また、薄膜の耐久性も問題がないことが確認できた。 レーザー管の製作については、直線偏光し、ガウス型の強度分布を持つEH11モードでの導波管の減衰係数とモード体積から目的の波長帯に適した管径と長さを決めた。実際の製作にあたっては、ガラス管の真直性や真円度が重要で、従来よりも管径が細くなるため、高精度のガラス加工技術が必要となったが、従来と同精度のレーザー管が製作できた。 以上、次年度以降の研究につながる結果を得ることができたので、おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を推進するために、アウトプットカップラーの設計精度の向上とその最適化、レーザー発振特性の測定、ビーム品質の測定を行う計画である。具体的な内容を以下に示す。 (1)アウトプットカップラーの設計精度の向上: 光学薄膜の重要な特徴の一つは、同じ材料でもバルク形状のものとは特性が異なることである。そこで、高抵抗Si基板上に各種単層膜(Ge、ZnS、CsI)をコーティングし、遠赤外レーザーを用いて、薄膜の光学定数を測定する。 (2)アウトプットカップラーの最適化: レーザー発振の最適化のために、透過率Tと反射率Rの比や遠赤外光の取出し径の異なるアウトプットカップラーを製作する。TとRの実測値と理論計算による設計値とを比較し、アウトプットカップラーの最適化を目指す。 (3)レーザー発振特性の測定: 製作したレーザー管とアウトプットカップラーをレーザー装置に取り付け、各種レーザー特性(波長、出力、偏光方向、圧力依存性、横モード、出力安定性)を測定する。 (4)ビーム品質の測定: 遠赤外領域におけるビームプロファイラーはかなり高価である。そこで、サーモグラフィーカメラを用いて、レーザービームの強度分布を撮影し、各ビームパラメーター(ビーム半径、ビーム発散角、M2因子)を測定する。その際、レーザーを照射するシートの熱伝導解析が必要となるので、これを行う。
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Causes of Carryover |
2021年度の実験が効率よく進んだ結果、消耗品(レーザー用ガス)の支出が予定より少額となったため、次年度使用額が生じた。次年度の実験にも必要となる消耗品(レーザー用ガス)の購入に使用する計画である。
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