2022 Fiscal Year Research-status Report
Challenge to strengthen ceramics beyond theoretical strength by introducing lattice defects
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21K04937
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
近藤 創介 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10563984)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | SiC繊維 / マイクロピラー / 共有結合 / 強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本来,IV-IV族化合物であるSiC結晶の硬さは共有結合強度に由来し,その本質は核間領域の電子軌道の重なりの大きさである.これは重なりを大きくすれば理論的には硬くなると理解できる.共有結合性結晶は圧縮強度が結合距離の3.5乗に反比例するとされ,SiCでも約10%の収縮でダイヤモンドに匹敵する.このことは,もし結合距離を一様に収縮できれば理論強度を超えられる可能性を示唆する.これを照射による格子位置交換の蓄積で実現できるのではないかということが本課題の「問い」である.本研究ではこの答えを,SiCマイクロピラーにイオン照射によってアンチサイトを導入し,その強度変化を追うことで明らかにすることを目指している. 本年度は,室温以下でSiC高結晶繊維(Hi-Nicalon Type SおよびTyranno SA繊維)をイオン照射し,原子の拡散がほとんどない状況でいかなる結晶構造変化が生じるか,また,それが強度にどのような影響を及ぼすかを調べることを目的とした.室温照射のため開発した水冷ホルダ上で照射した試料は,著しい変形を伴う体積膨張が認められそれが結晶の非晶質化と不純物との混合により発生した.この試料からマイクロピラーを作製し,強度特性変化を調査したところ,非晶質化に伴って強度が低下しているにもかかわらずヤング率の低下と伸びが著しく増加していることがわかった.これは,アンチサイトの導入によって強度が増加するという予想には反するがおそらく結晶構造を失ったことが原因と考えられる.結晶構造を維持したままアンチサイトを導入する照射条件を調査する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までにSiC/SiC複合材料に内包されるSiC繊維(Hi-Nicalon Type SおよびTyranno SA繊維)に対し,繊維束の長手方向と垂直な断面を研磨した.目的は室温以下での照射であったので,ビームヒーティングの熱除去のために,サンプルは純銅の粉体の中に埋め込んだ後に,ホットプレスで成型し,その後試料断面を切断,および機械研磨によって照射表面とした.照射はSiC換算で深さ方向の平均で100dpaに達するまで実施することができた.照射後の表面は著しく変形しており,激しい体積変化と形状変化が起こっていることが明確であった.本年度はその著しく変形した複合材料表面から,繊維のマイクロピラー圧縮試験を作成する方法を考案し50本以上に及ぶ試験片を照射表面から作成,および試験することに成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
R5年度はこれまでに得た成果を論文として発表する.また,R4年度までの成果では著しい構造変化を伴う照射誘起非晶質化とそれに伴う膨張が純粋なアンチサイト結合増加の影響を評価する障壁となっていた.300℃以上では(しかも,大きな結晶構造変化や空孔集合体が形成されない)収縮の発生が予想されており,SiC構造を維持したまま平均結合距離が小さくなる場合の強度評価ができる可能性がある.そこで,R5年度は300℃以上の照射(照射自体はR4年度に完了している)と強度評価を実施し目的に対応する結論を得ることを目指す.
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