2021 Fiscal Year Research-status Report
PCRおよび生体試料を用いた新規放射線被ばく評価の実用化のための研究
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21K04939
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
松尾 陽一郎 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (90568883)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉 佳伸 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 教授 (60252582)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 放射線 / DNA / 生体影響 / PCR |
Outline of Annual Research Achievements |
リアルタイムPCRを用いたDNA鎖切断収量を指標とした吸収線量の新規評価法について研究を推進している。DNA損傷という生体反応を指標として、電離放射線によるDNA損傷の収量を評価し、生体試料を用いた吸収線量を推定するための新規手法を開発することを目的とする。2021年度は、項目①感度の向上として、DNA鎖配列の鎖切断の頻度に及ぼす効果について検討した。また、項目②実際の使用状況を模擬した検証として、緩衝液中にDNAを保管した場合と、乾燥状態としてDNAを保管した場合について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①感度の向上:DNAの配列が異なる場合、DNA鎖切断の収量が異なる可能性がある。文献調査によって、TTTが連続する配列内にGが1塩基含む配列、TTTが連続する配列内にGが3塩基含む配列について、人工的に合成し、蛍光プローブを用いて鎖切断が生じるかどうか検討した。この結果、TTTが連続する配列内にGが1塩基含む配列は、ランダムな塩基配列(出芽酵母のURA3遺伝子座の一部の配列)と比較して、DNA鎖切断が生じやすいことが示された。 ②実際の使用状況を模擬した検証としては、湿式としてTE緩衝液中に室温の条件でDNA保存した場合、および乾式としてガラス上に固定したDNAに対してPCR効率を評価した。湿式については30日間、乾式についても同様に30日間の保存によってもPCRによる評価効率が低下しないことが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
実際に放射線作業従事者が、本手法に拠るDNA素子を使用する場合、DNAを長期間・小型化した状態で携帯する必要がある。また、大量のサンプル処理を実現しなくてはならない。このための検討を行う必要がある。具体的には、2021年に実施した、緩衝液中および乾燥状況でのDNAを効率よく保存する方法を確立する。また、セルロースナノファイバーにDNAを吸着させ、迅速かつ効率よくDNAを回収する技術について試験する。これらの検討をもとに、DNA素子の長期保存性を確立する。また、DNA損傷量から被ばく線量を推定するための方法について検討し、課題を抽出、解決方策を検討する。線量を推定するための最も重要な点は、線質(LET)を推定する事であり、このためにはDNAに生じた損傷を区別することが必須となる。そこで放射線を照射したDNAに対し、APサイトを鎖切断に変換する酵素(Fpg)を作用させることで、APサイトのPCRへの阻害の有無を明らかにし、さらに損傷の種類を区別して評価する。最終年度では、これらDNA鎖切断収量、DNA損傷の種類の推定をもとに、線質(LET)および線量の推定を行う。具体的には実際にガンマ線(低LET放射線)および重粒子線(高LET放射線)を照射し、そこから線質、線量が推定するための試験を行う。
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