2023 Fiscal Year Annual Research Report
PCRおよび生体試料を用いた新規放射線被ばく評価の実用化のための研究
Project/Area Number |
21K04939
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
松尾 陽一郎 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (90568883)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉 佳伸 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 教授 (60252582)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 放射線 / DNA切断 / PCR / ガンマ線 / 炭素線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅率がサンプルの鋳型DNAの量に比例することに着目し、未損傷鋳型DNA量を評価する手法を確立する。 本手法については、低LET(線エネルギー付与)放射線に属するガンマ線を照射した場合のDNA鎖の損傷に対してPCRによる評価を行ってきた。そこで2023年度は、高LETに属する炭素線を照射した場合のDNA損傷について評価した。また、PCRを用いた本手法により、DNA鎖切断やAPサイト(脱塩基部位)切断および塩基の酸化といったDNA損傷の種類を区別できるかどうか明らかではなかった。そこで本研究では、ガンマ線を照射したDNAに対し、APサイトおよび酸化塩基を鎖切断に変換する酵素処理を行うことで、損傷の種類を区別できるかどうか検証した。 結果として、炭素線(LET:13.3keV/μm)を照射した場合、ガンマ線を照射した場合と比較して未損傷の鋳型DNA量が増加した。1GyではDNA損傷の収率が約3%高くなることが示された。これはガンマ線照射と比較して、炭素線によって、PCRを阻害するDNA損傷が多く生じたことを意味している。また、APサイトと酸化塩基を鎖切断に変換するFPG酵素を処理させた場合、未処理の場合と比較して、ガンマ線1Gyを照射した際の未損傷の鋳型DNA量は減少した。さらにAPサイトのみを鎖切断に変換するEndnuclease(III)酵素を用いた場合は、未処理の結果と差異がないことが示された 。このことから、1Gyのガンマ線照射によってはAPサイトは生じず、塩基の酸化は生じることが示された。この結果により、PCRによりDNA損傷の種類を区別できる可能性が示された。
|