2021 Fiscal Year Research-status Report
海水淡水化プラント用ウラン選択性吸着剤の最適化に関する研究
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21K04946
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
野上 雅伸 近畿大学, 理工学部, 教授 (50415866)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 海水ウラン / 回収 / 吸着 / トリホスフィントリオキシド / マイクロカプセル |
Outline of Annual Research Achievements |
吸着法による海水、中でも高濃度海水からのウラン回収を目的として、当研究グループが見出した、中性付近で6価のウランと特異的かつ選択的に結合する有機リン系化合物抽出剤1,1,3,5,5-pentaphenyl-1,3,5-triphosphapentane trioxide(PPTPT) をポリマーに含浸担持させた各種吸着剤の開発を行っている。これまで複数の有望な吸着剤を見出してきたが、一方含浸型吸着剤では一般的に、使用中に抽出剤が担体から徐々に脱離し、吸着性能が低下することが避けられない。本年度はこの対策の一環として、硝酸酸性の高レベル放射性廃液からの核種分離に実績のある、バイオポリマーの一種であるアルギン酸(ALG)を固定化担体として用い、抽出剤をゲルポリマー内に包括固定した抽出剤内包型マイクロカプセル(MC)を調製すると共に、海水ウラン回収用新規吸着剤としての適用可能性について検討した。抽出剤としてはPPTPTの他、NaやBaと水に不溶な塩を形成するドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)等の抽出剤を使用した。 アルギン酸バリウムゲル(BaALG)にPPTPTが内包されたPPTPT-BaALG、およびPPTPTとDBSAが内包されたPPTPT-DBSA-BaALGからのPPTPT脱離について検討したところ、PPTPT-BaALGはPPTPTが80%以上脱離したのに対し、PPTPT-DBSA-BaALGのPPTPT脱離率は10%未満となった。これは、後者ではDBSAがイオン交換反応によりNaを吸着することでDBSAのNa塩となり、それが壁物質となったため脱離が抑制されたと考えられる。このように、MCからのPPTPT脱離は、アルギン酸ゲルポリマーへの内包だけでなく、壁物質として寄与する化合物を共に内包することで改善できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載の通り、本研究課題の実用化においてネックとなる可能性が高い抽出剤の担体からの脱離に関し、これを改善できる見通しが得られたこと、併せて過去約1年半実施できなかったウラン実験を再開でき、データ蓄積が図れたことの2点による。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度検討したMCはほぼ先行研究に則った形で調製したが、吸着剤の機械的強度等の観点から、できればそれ以前から検討しているシリカポリマーをMCと融合させた吸着剤を調製したい。併せて、海水~高濃度海水条件におけるウランの吸着データの更なる蓄積を図る予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者多忙のため、購買業務が滞ってしまった。本研究課題にて必要不可欠のPPTPTが尽きてきたので、次年度はこれを含め、試薬の購入で相当額を使用する予定である。また学外での実験のための旅費も発生する見込みである。
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