2023 Fiscal Year Annual Research Report
自然放射線被ばくの環境変化に対する生体恒常性維持機能の解明
Project/Area Number |
21K04954
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
神崎 訓枝 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 人形峠環境技術センター, 研究職 (70826510)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ラドン / 低線量放射線 / メタボローム解析 / 放射線影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自然放射線に対する生体恒常性維持機能の一端を明らかにするため、天然に存在する放射性希ガスのラドンを吸入させたマウスの抗酸化機能に注目したメタボローム解析を行った。初年度には、ラドン吸入実験(濃度:バックグラウンド(約20)、200、2000 、20000 Bq/m3、曝露期間:1、3、10日間)を、2年目には、X線全身照射実験(非照射、0.1、0.5、1、3、10 Gy)を実施し、マウスの肺と血清の代謝物を網羅的に分析した。最終年度には、これらの実験で得られたデータの解析を進め、被ばく方法や線量による違いを検討して結果を取りまとめた。成果としては、肺や血清から検出された代謝物の変化をクラス分類すると、ラドン吸入(超低線量(率):数十nGy~数十μGy)やX線全身照射(低線量から高線量:0.1Gy~10Gy)を判別できることがわかった。また、重回帰分析を行い、数種類の代謝物の変化から被ばく線量を予測する式を算出することができた。ただし、ラドン吸入では、総線量についてのデータ解析は容易ではなかった。これは、慢性的な被ばくによる生体反応が複雑であるためと考えらえるが、濃度別・曝露期間別に分けて解析すると、比較的精度良く判別や予測が可能であったため、ラドン吸入後の代謝機能におけるラドン濃度依存性や経時的変化を明らかにすることができた。さらに、これまでに蓄積した実験データを用いて、肺と血清以外にも、脳、肝臓、心臓で同様の解析を実施し、臓器による違いも明らかにした。本研究で明らかになったラドン吸入で変化する代謝物が生体へどのような作用をもたらすのかは、さらなる検討が必要である。
|