2022 Fiscal Year Research-status Report
微生物トレーサ法を地下資源開発に適用する技術基盤の確立
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21K04961
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 肇 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50549269)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | モニタリング / 油ガス田 / DNA解析 / 微生物源追跡 / トレーサー / 石油開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
秋田県の油田における微生物トレーサ法の実証を継続した。同油田のような実用的なシミュレーションモデルのない地下性状が複雑な古い貯留層では、水攻法の最適化は難しい。同油田では、これまでは水攻法を経験的な推測を元におこなっていた:例えば、これまでは、ある生産井での回収を増進する意図で、距離が近い圧入井への水圧入が集中的に行われていた。しかし、同生産井で圧入水のトレーサである好気性菌がほぼ検出されなかったことから、同生産井が生産している層と、同圧入井が圧入している層の間には流体が通るような接続はなく、別流体のプールであることが判明した。一方、より遠いところにある別の生産井からは好気性菌を確認し、圧入井と導通していることが示唆された。さらに、別の生産井で独自の菌が検出されたことから、同生産井の近辺の断層が有効でシールされており、他の井戸が生産しているプールとは独立していることが示唆された。以上を考慮し、貯留層シミュレーションモデルが無い条件下での水攻法の調整が可能となった。これにより、これまでに同油田の全体的な効率が向上しており、水攻法の最適化ができたと判断されている。これらの成果を論文にまとめ発表した。また、上記では同じ貯留層の中で断層に区切られた貯留層での適用可能性を検証したが、新たに垂直方向に複数貯留層が存在する油田、およびいくつかの異なる地下水環境における微生物トレーサ法の実証に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際の現場における微生物トレーサ法の有用性が実証されたため、計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
・他の環境での微生物トレーサ法の実証:別の地下環境における微生物トレーサ法の適用可能性を検証する。 ・微生物トレーサの地下環境における挙動を理解:コアフラッド実験等により、微生物トレーサが地下を流動する際に、地下の各環境条件が微生物に与える影響を解析する。 ・微生物叢の比較手法の信頼性の向上:新たにベイズ推定を利用した確率的な評価手法等を導入し、各試料の微生物叢の比較手法の信頼性を向上する。
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