2023 Fiscal Year Research-status Report
Properties of Functionalized Ionic Liquids and their Behavior as Extractants on the Molecular Scale
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21K04982
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
高椋 利幸 佐賀大学, 理工学部, 教授 (70291838)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 抽出溶媒 / 抽出剤 / 水酸基 / カルボキシ基 / エステル基 / ヒドラジド基 / ニッケル(II)イオン / 分配係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
合成した機能性イオン液体を用いた水相からのニッケル(II)イオン(Ni2+)の抽出メカニズムを解明することに注力した。機能性イオン液体が持つ配位性官能基は、水酸基、カルボキシ基、エステル基、ヒドラジド基である。 ①前年度に引き続き、連続変化法によりイオン液体中でのNi2+に対する各機能性イオン液体の配位数決定の再現実験を行った。その結果、水酸基6配位、カルボキシ基4配位、エステル基4配位、ヒドラジド基3配位が正確な配位数であることを結論した。 ②抽出率が高かったカルボキシ基およびヒドラジド基修飾の機能性イオン液体を用いた抽出実験を複数回行い、メカニズムを考察した。なお、後者は水に溶解するため、非修飾イオン液体に抽出剤として溶解して用いた。抽出ではカルボキシ基イオン液体がNi2+に2分子または1分子配位している。水が存在しない連続変化法の配位数との相違は、Ni2+の残りの配位サイトに4つの水分子が配位するためと考えた。Ni錯体の電荷は0または+1価であることが考えられた。ヒドラジド基イオン液体は3配位であり、Ni錯体の電荷は+2価であると考察した。どちらの抽出でも電荷を持ったNi錯体種が抽出され、イオン液体の特性を生かした抽出が行われていることが確認された。 ③抽出されるNi錯体を赤外分光法で観測し、配位構造を考察した。計画していたEXAFS法では得られる動径分布関数から窒素原子と酸素原子の配位を区別することは難しいと考え、赤外分光法を採用した。カルボキシ基はCOO-基として酸素原子でNi2+に配位していることがわかった。ヒドラジド基はカルボニル酸素原子が配位していることが明らかになった。さらに、紫外可視吸光スペクトルの顕著なピークシフトから窒素原子も配位し、酸素原子とともにキレート環を形成していることを考察した。このことが、ヒドラジド基イオン液体が高い抽出率を示す原因であると考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで合成した機能性イオン液体を用いて、Ni2+以外の金属イオンに対する分配係数および抽出率の決定に至っていない。また、抽出メカニズムを考察する際に重要な錯形成平衡の熱力学的諸量(エンタルピーとエントロピー変化)の決定を行っていない。これらのことから、研究の進捗はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで合成した機能性イオン液体を用いてNi2+以外の第1遷移金属イオンに対する抽出実験を行う。 Ni2+に対して高い抽出率を示したカルボキシ基およびヒドラジド基修飾の機能性イオン液体の錯形成平衡を解明する。非修飾イオン液体C8mimTFSAを溶媒として、Ni2+に対する機能性イオン液体分子の錯形成を紫外可視吸光スペクトルの変化から観測し、錯形成の安定度定数を決定する。いくつかの温度で決定した安定度定数に対し、van't Hoffプロットを行い、錯形成のエンタルピーおよびエントロピー変化を決定する。決定したパラメーターから錯形成平衡ならびに抽出平衡のメカニズムを考察する。これらの結果に基づいて、さらに配位能と抽出率が高い機能性イオン液体合成の指針を提示する。
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Causes of Carryover |
令和3,4年度に単年度予算として高橋産業経済研究財団より助成を受け、これらを優先して使用した。その効果は令和5年度にも及んだため、本科研費に残予算を生じた。研究計画の若干の遅れもあることから、本科研費を1年延長して研究を継続する。残予算はその遂行に使用する。
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