2023 Fiscal Year Annual Research Report
Development of surface-enhanced near-infrared multiplex stimulated Raman spectrometer and its application to elucidation of dynamic structure of photosystem
Project/Area Number |
21K04984
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
高屋 智久 富山県立大学, 工学部, 准教授 (70466796)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 誘導ラマン散乱 / コヒーレントアンチストークスラマン散乱 / 近赤外 / 金ナノ粒子 / 表面プラズモン共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、可視光に敏感な試料の構造、物性、および機能を分子レベルで計測し評価するための高感度近赤外ラマン分光計を開発し、光化学系タンパク質複合体の動的構造を解明することを目的とした。 本研究では波長1064 nmのレーザーを光源とし、かつ高い感度を有する近赤外ラマン分光計を開発するため、表面増強ラマン散乱および非線形ラマン散乱を複合的に用いることとした。まず、波長1064 nmにおいて高い表面増強効果を有する金ナノ粒子の作製条件を検討した。近赤外領域に表面プラズモン共鳴波長を有する金ナノ粒子の作製に関する既報をもとに、ロッド状および球状の金ナノ粒子を合成し、可視・近赤外分光計を用いて表面プラズモン共鳴波長を調べた。作製条件を調整し、共鳴波長を700~900 nmの間で制御したが、粒子の濃度不足、あるいは作製時に添加した界面活性剤による対象分子の吸着阻害により、表面増強ラマンスペクトルの観測には至らなかった。 次に、1064 nmレーザー光源を用いていくつかの非線形ラマン散乱現象の観測試験を行ったところ、コヒーレントアンチストークスラマン散乱(CARS)が最も感度良く観測された。そこで、CARSを利用した近赤外非線形ラマン分光計を立ち上げた。本装置により、トルエン、シクロヘキサン、アセトン、エタノールなどの有機溶媒のCARSスペクトルが波数700-1750 cm-1の領域において高い信号雑音比で観測された。そこで、コマツナ汁液のCARSスペクトルを測定したところ、波数約1050 cm-1にバンドが現れ、汁液中の硝酸イオンの対称伸縮振動に帰属された。植物体の吸収分光計測による硝酸イオン濃度推定の研究はこれまでに多数報告されているが、硝酸イオンによる光吸収を直接測定することはきわめて困難であった。本分光計により、硝酸イオンの分光信号を他の分子種と明瞭に区別して観測することが可能となった。
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