2021 Fiscal Year Research-status Report
Quantum design for novel optical functional materials composed of open-shell molecules
Project/Area Number |
21K04995
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岸 亮平 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (90452408)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 開殻分子系 / マクロ物質 / 量子化学計算 / 固体材料 / 光応答物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、モノラジカル開殻分子の近接積層状況において、分子間の不対電子間で共有結合的な相互作用が生じることによる電子相関状況(開殻性)と三次非線形光学物性(第二超分極率)の変化の機構を明らかにするため、モデル分子としてsp2型のメチルラジカルを積層したN量体分子集合系モデルを構築した。このモデルに対する高精度な量子化学計算をもとに、結果をNが無限大の極限に外挿し、無限一次元積層系において分子積層距離とその交替が与える影響を理論解析した。その結果、開殻性の指標としてジラジカル因子を算術平均した平均ジラジカル因子y_avを用いた場合、y_avが小さな(0.2程度の)領域において無限一次元系の第二超分極率が著しく増大する傾向を見出した。現在、得られた研究成果をR4年度初頭に学術雑誌に投稿する準備を進めている。 上述した、平均ジラジカル因子の小さな領域での増大を積層系で実現する方法としては、単分子で小さな開殻性や中程度の開殻性を示す系を適切な配向で積層させる方法も考えられる。そこで、様々な開殻性を有する縮環分子系の分子設計について、実験研究者と共同で検討を行った結果、ペンタレンやs-インダセンを骨格構造として持つ様々な縮環分子の末端に六員環を縮環させた場合に、縮環の位置や数により開殻性のファインチューニングが可能であることが明らかになった。また、このような系の開殻性やスピン物性の量子化学的な検討は、量子化学計算の近似レベルに結果が大きく依存する。五員環と七員環を含む小さな開殻性を示す縮環炭化水素系であるbis-periazuleneにおける検討では、多参照摂動論と呼ばれる高精度な近似法を用いた検討により、各種の実験結果の傾向を(半)定量的に再現することが出来ることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題においては、開殻分子の分子集合系の電子構造と物性について理論計算化学の方法を駆使して明らかにすることを目的としている。理論計算の結果は、特にこのような開殻分子の電子構造や物性の場合、近似レベルに結果が依存する一方、計算量との兼ね合いで適切な近似レベルを選択する必要がある。R3年度は、モデル分子を適切に設定することや、実験研究者との共同研究により、高精度な計算結果や実験結果と、低コストな計算結果の傾向を比較検討することができた。計算手法についての見通しは、本研究課題の遂行の一つのボトルネックであったため、これに関する知見が得られたことで、全体の計画においても概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、本年度の成果により得られた、「平均ジラジカル因子(y_av)の小さな一次元積層系」という設計指針を実現可能な、具体的な実在分子系・分子集合系の設計と物性予測に焦点をあてた検討を行っている。これを実現する方法として、i) モノラジカル種や強開殻分子を近接積層(R < 3.0 A)させ、強い共有結合性の分子間相互作用により小さなy_avを実現する、ii) 中程度の開殻性を持つ分子を積層させ、分子間相互作用のチューニングによりy_avを低下させる、iii) 単分子で小さな開殻性を持つ分子を積層させる、という方策が考えられる。このそれぞれに対して、R3年度で検討を始めた種々の候補分子(電荷分極構造を有する開殻分子系、電子酸化還元状態を利用する系など)をもとに検討を行う。また、本課題の最も重要な部分である、分子内・分子間の電子相関状況を表す物理パラメータの算出・解析法についてもR3年度末から着手しており、R4年度で本格的に検討する。
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Causes of Carryover |
現在執筆中の論文投稿(あるいはOA化)費用として予算を予定していたが、投稿が次年度初頭の見込みとなったため。
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Research Products
(48 results)
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[Journal Article] A Tale of Two Isomers: Enhanced Antiaromaticity/Diradical Character versus Deleterious Ring‐Opening of Benzofuran‐fused <i>s</i>‐Indacenes and Dicyclopenta[<i>b</i>,<i>g</i>]naphthalenes2021
Author(s)
Barker Joshua E., Price Tavis W., Karas Lucas J., Kishi Ryohei, MacMillan Samantha N., Zakharov Lev N., Gomez‐Garcia Carlos J., Wu Judy I., Nakano Masayoshi, Haley Michael M.
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Journal Title
Angewandte Chemie International Edition
Volume: 60
Pages: 22385~22392
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Dianion and Dication of Tetracyclopentatetraphenylene as Decoupled Annulene‐within‐an‐Annulene Models2021
Author(s)
Miyoshi Hirokazu, Sugiura Ryosuke, Kishi Ryohei, Spisak Sarah N., Wei Zheng, Muranaka Atsuya, Uchiyama Masanobu, Kobayashi Nagao, Chatterjee Shreyam, Ie Yutaka, Hisaki Ichiro, Petrukhina Marina A., Nishinaga Tohru, Nakano Masayoshi, Tobe Yoshito
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Journal Title
Angewandte Chemie International Edition
Volume: 61
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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