2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K04996
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
辻 雄太 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (80727074)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 触媒 / 表面 / 軌道相関図 / 密度汎関数法 / 拡張Hueckel法 / ウォルシュ図 / 単一原子合金 / メタン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、メタンの非酸化カップリング反応(NOCM)を実現するための触媒開発に取り組んだ。従来のPt触媒では、メタンが過酸化されコークスが生成するため、反応が困難であることが知られている。本研究では、有機金属化学や錯体化学の概念を応用し、分子レベルから問題にアプローチした。特に、C-H結合活性化、すなわち酸化付加反応、C-CおよびH-H結合形成、すなわち還元的脱離について、軌道理論の観点から詳細に議論した。 また、密度汎関数法と拡張Hueckel法を用いた計算により、Pt単原子サイトを含む単一原子合金(SAA)触媒の設計を試みた。その結果、Pt1/Au(111)SAA触媒がNOCMに有効であることが理論的に示唆された。このようなSAA表面には、不活性なAu原子の海にPt単原子サイトが1つだけ存在することが期待される。これにより、過酸化を抑制し、還元的脱離を促進することができる。 本研究では、ウォルシュ図を表面反応に拡張した図を用いて、C-H結合活性化や還元的脱離などの反応機構を明らかにした。また、Pt1/Au(111)SAA触媒の理論的な設計も行い、実験的な検証が待たれる。 この研究成果は、メタンの非酸化カップリング反応の触媒開発に対する新たなアプローチを提供している。従来のPt触媒では達成できなかった反応を、SAA触媒の設計により実現する可能性があることが示唆された。今後は、実験的な検証により、より効率的なSAA触媒の開発が期待される。また、本研究で提唱された反応機構の理解は、新規触媒の開発に対する基盤となるとともに、SAA触媒の設計に応用されることが期待される。さらに、本研究で用いられた軌道理論や計算手法は、触媒開発だけでなく、他の化学分野でも応用が可能であることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
この研究が当初の計画以上に進展している理由として、以下のような点が挙げられる。 まず、本研究は、メタンの非酸化カップリング反応という、化学分野において難解な問題に取り組んでいる点が特徴的である。この反応は、地球温暖化ガスであるメタンを有用な炭化水素に変換することができる反応であり、研究の成果が産業界に大きな影響を与えることが期待される。 次に、本研究は、軌道理論や密度汎関数計算手法を駆使して、シングルアトム合金触媒の開発に取り組んでいる点が注目される。これにより、従来の単金属触媒にはない反応性や選択性を持つ触媒を設計することが可能になる。 さらに、本研究の成果が米国化学会誌に掲載されたことである。米国化学会誌は、世界的に有名な化学専門誌の一つである。そのため、本研究の成果に関する論文の掲載は、その高い学術的な価値を示すものとなり、研究の発展にとって非常に重要な意味を持つ。 以上のような点から、この研究は非常に順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、軌道相関図を用いたCO2還元反応の解析を実施する予定である。今後の研究によって、CO2還元反応の理論解析において、軌道相関図を用いた新しいアプローチを確立することが期待される。これによって、より高い効率でCO2を化学エネルギーに変換する方法を提案することができ、環境に優しく持続可能なエネルギー源の開発につながると考えられる。また、軌道相関図の表面科学への応用を拡大することで、金属表面やセラミックス表面における種々の反応機構の理解を深め、触媒設計の精度を高めることが期待される。これによって、より高い触媒活性を有する材料の開発が可能となり、化学工業の現場において実用的な触媒技術の開発につながると考えられる。さらに、データ科学の手法を取り入れることで、表面科学に関する問題に対してより高度な解析が可能となる。また、データに基づいた定量的な分析によって、表面科学に関する新しい知見を得ることができると期待される。
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Causes of Carryover |
2022年度後期のスパコンの利用申請において、使用希望者多数のため、当初使用予定であったノード数を確保することができなかった。そのため、その申請のための予算は次年度使用に回すこととした。次年度は希望のノード数を確保できるように複数のスパコンセンターの使用を検討する。
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