2023 Fiscal Year Annual Research Report
多価分子イオンの探索・分光のための多電子-イオン同時計数法の開発
Project/Area Number |
21K05000
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
小田切 丈 上智大学, 理工学部, 教授 (80282820)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 多価分子イオン / 光多重電離 / 同時計数 / 放射光 / オージェ遷移 |
Outline of Annual Research Achievements |
多価分子イオンは、多くの電荷移行状態と結合しているためそのエネルギーおよび性質を理論的に予測することは難しく、量子物理化学におけるフロンティアといえる研究対象である。本研究では、分子の軟X線吸収から多段のオージェ遷移後に多価分子イオンが生成することに着目し、理論と比較しうる多価分子イオンの詳細な実験的知見を得ることを目的とする。 分子の軟X線吸収に伴う多段のオージェ崩壊では、上述のように、複数の電子と終状態としての多価分子イオンが生成する。この反応におけるすべての放出電子およびイオンを同時計数することで多価分子イオンの分光学的・動力学的知見を得ることが可能である。本研究では、さらにフラグメントイオンの運動量分布測定まで視野に入れた「多電子イオン同時計数VMI装置」を開発し、多価分子イオン分光実験の手法を確立することを目指す。これまでに同時計数の測定は成功していたものの、その効率が低いこと、および、VMI画像から運動量分布を得るための解析方法に困難があった。最終年度は、電極系を改造し試行錯誤を繰り返すことにより、測定結果に加えシミュレーションを利用することでフラグメントイオンの運動量分布が得られることを見出した。また、効率が低い点に関しては、データ処理を工夫することでノイズを除去し、これまで数え落とされていたデータを復活させ同時計数効率を大幅に向上させることに成功した。特段2024年3月の実験にてこれらについて大きな進展が得られた。現在実験結果の解析は継続中であるが、以上をもって「多電子イオン同時計数VMI装置」の開発としておおむね成功したといえる。
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