2021 Fiscal Year Research-status Report
レアメタルを含まない革新的な燐光材料および燐光-蛍光二重発光材料の開発
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21K05005
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
清水 正毅 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (10272709)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 蛍光 / りん光 / 二重発光 / 光誘起りん光 |
Outline of Annual Research Achievements |
文献既知のジメトキシテレフタル酸に塩化チオニルを作用させて酸塩化物に導いたのち、これに2-ブロモフェニル銅反応剤を作用させて、対応する1,4-ビス(ブロモフェニル)-2,5-ジメトキシベンゼンを良好な収率で得た。これに三臭化ホウ素を作用させて脱メチル化したのちクロロシランでシリル化することにより、対応するジシロキシベンゼンを合成した。得たジシロキシベンゼンは室温真空下、結晶状態において緑色のりん光を量子収率0.76で発することを見つけた。対応する臭素無置換体の量子収率は0.64であることから、ベンゾイル基への臭素置換がりん光強化に有効であることを明らかにした。単結晶X線構造解析から、結晶中には水素結合、CH…π相互作用、臭素-臭素のハロゲン相互作用が複数存在していることが明らかになり、それらの分子間相互作用が励起三重項状態の熱失活の抑制に有効に作用していると考えている。次に、パラジウム触媒を用いてヘキサメチルジシランを反応させて臭素をトリメチルシリル基に置換した。現在、発光性評価を進めている。また、ジシロキシ体と同様の合成法で、ビス(トリメチルシリルオキシ)ベンゼンを収率良く合成した。このベンゼン誘導体の結晶は、室温真空下、緑色蛍光と橙色りん光の二重発光を示すことがわかった。対応する無置換体のりん光は緑色であることから、トリメチルシリルオキシ体ではベンゾイル基への臭素置換が発光スペクトルを長波長化させることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
電子求引基として働くベンゾイル基にハロゲン原子を導入した構造を基盤とするりん光材料や蛍光-りん光二重発光材料の開発については、概ね順調に進展している。一方、ハロゲン置換アリールオキシ基を電子供与基として利用するジアロイルベンゼンの開発については、標的分子の合成について予期せぬ副反応が起こることが判明し、進展はやや遅れているが、現在合成経路を見直して遅れを取り戻すべく研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
合成で遅れが出ていたハロゲン置換アリールオキシ基を電子供与基として利用するジアロイルベンゼンについては、銅触媒を用いて2,5-ジヨード-1,4-ジアロイルベンゼンとフェノールをカップリングさせることにより収率良く合成できることが判明したので、今後はその反応条件を用いて合成をおこない、標的分子の物性解明を進めていく計画である。
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Causes of Carryover |
研究の初期段階で合成した1,4-ビス(ブロモフェニル)-2,5-ジメトキシベンゼンおよびその臭素をフィンケルシュタイン反応によってヨウ素に置換した1,4-ビス(ヨードフェニル)-2,5-ジメトキシベンゼンのそれぞれが、室温大気下、PMMA薄膜に分散した状態でUVランプを照射しつづけると、興味深いことに、肉眼で確認できるほど橙色りん光が強くなる現象を予期せず見つけた。紫外光照射を続けてりん光強度が著しく大きくなる現象(光誘起りん光)は、非常に珍しく近年になって数例報告が出始めたところであり、その理由解明は大きな課題となっている。我々が見つけた系についてもこの現象の再現性、一般性を追求することにしたので、次年度の研究費使用が生じた。繰り越した411,072円は、標的分子の合成に必要な消耗品(有機溶媒、薬品、触媒、ガラス器具、プラスチック器具など)に300,000円を充当し、残りは合成した分子の物性評価のための消耗品(分光測定用の溶媒、プラスチック器具、分光用セルなど)の購入に充てる計画である。次年度分として請求した助成金は、アリールオキシ基を電子供与基とするりん光材料や非対称型りん光材料の合成と評価に必要な消耗品の購入に充てる計画である。
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