2023 Fiscal Year Research-status Report
レアメタルを含まない革新的な燐光材料および燐光-蛍光二重発光材料の開発
Project/Area Number |
21K05005
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
清水 正毅 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (10272709)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | りん光 / 蛍光 / 二重発光 / 光誘起りん光 |
Outline of Annual Research Achievements |
市販の2,5-ジブロモパラキシレンを過マンガン酸カリウムで酸化してジブロモテレフタル酸を調製し、これに塩化チオニルを作用させて対応する酸塩化物に導いたのち、メトキシメチルアミン塩酸塩を反応させてワインレブアミドへと変換し、これにPhMgBrを作用させて対応するジベンゾイルジブロモベンゼンを合成した。続いて、このジブロモベンゼンに対してFinkelstein反応を行なって対応するジヨードベンゼンにしたのち、銅触媒を用いてオルトブロモフェノールをカップリングさせた。得たビス(オルトブロモフェニル)体を再度Finkelstein反応を用いてヨード体に変換し、最後にパラジウム触媒を用いてジアリールシリル化を行い、対応する2,5-ビス(2-シリルフェノキシ)-1,4-ジベンゾイルベンゼンを合成した。得たジベンゾイルベンゼンは、結晶状態において室温真空下、緑色(発光極大波長492-514ナノメートル)のりん光を良好な量子収率(Φ=0.36-0.52)、ミリ秒オーダーの寿命(45-55 ms)で発することを明らかにした。また、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)薄膜に分散した状態においても、このジベンゾイルベンゼンは室温真空下、同様に緑色りん光を発することを見出した。なお、量子収率は0.02-0.03、発光寿命は33-64ミリ秒であり、結晶状態と比較して量子収率が大幅に低下した。PMMAに分散したことで分子振動が結晶状態よりも大きくなり、励起三重項状態が熱失活したためと考えている。シリル基が臭素やヨウ素に代わった類縁体は室温でりん光を示さなかったので、フェノキシ基の2位に置換するシリル基の存在が室温りん光の発現に必須であることがわかる。エーテル酸素上に生成するオキシラジカルが近接するシリル基の炭素-ケイ素σ結合との超共役により安定化を受けているためと考察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ベンゾイル基のオルト位のホウ素化が、当初計画していた手法では円滑に進行しないことがわかったため、他の合成ルートを立案してその改善に臨んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況に記したように、オルト位へのホウ素の導入を当初のルートとは別の合成法(参考文献:Org. Lett. 2023, 25, 5875-5879)で検討することにより、標的分子の合成を果たし、その物性解明を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
これまでに得た成果を論文としてまとめるために必要な追加データの取得や合成ルートに問題があることが判明し、代替ルートによる合成が必要な標的分子の合成の完了と物性解明を果たすために次年度使用額が生じた。繰越した研究費は、追加データ取得や代替ルートによる合成に必要な試薬や物性測定用消耗品、また学会参加のための費用に充当する計画である。
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