2021 Fiscal Year Research-status Report
ゼロ磁場ESRの分光的・電気的計測法の確立と有機デバイスの三重項ハーベスト研究
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21K05011
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Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
脇川 祐介 静岡理工科大学, 先端機器分析センター, 講師 (90708512)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 光検出磁気共鳴 / 電流検出磁気共鳴 / 三重項ハーベスト / 有機半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
低炭素社会の実現を背景に実用化が期待されている有機光電変換素子の開発において、三重項励起子の有効利用(三重項ハーベスト)が素子高性能化への鍵として注目されている。しかし、動作中の有機電子デバイスにおいて(オペランド)、三重項ハーベストを確かめ、その反応機構を調べる有効な計測手段は確立されていない。そこで本研究では、ゼロ磁場における電子スピン共鳴法と発光・電流測定法を融合させることで、三重項ハーベストをオペランド観測する新しいスピン計測法を開発する。また、三重項ハーベストの支配因子である三重項励起子や電荷キャリアの衝突対の挙動を解明することで、その制御法の創出を目指す。 本年度は、ゼロ磁場において電子スピン共鳴による電流および発光変化(EDMR・ODMR)を測定する装置の開発と、装置を自動制御する測定プログラムの開発を行った。開発したゼロ磁場EDMR測定法と密度行列を用いた理論計算を用いて、高分子半導体ポリ (3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)薄膜における光生成した電荷の再結合ダイナミクスを定量的に明らかにした。また、テトラセンの多結晶粉末におけるゼロ磁場付近のODMRの測定と密度行列を用いた理論計算から、本研究で提案するODMR測定法が、三重項ハーベストのオペランド観測に適用できることを証明した。開発した装置は、10-6以下の非常に微小な電流および発光変化を検出することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定である装置開発を予定通り進めることができた。また、次年度から実施する予定の電子デバイス作製や蒸着法等による薄膜作製の準備を行うことができた。次年度の早期から、様々な有機材料とその電子デバイスにおける三重項ハーベストの評価を行うことができる状況から、上記のように判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
確立したゼロ磁場EDMR・ODMR測定法を、三重項ハーベストを示す様々な有機材料とその電子デバイスに適用し、三重項ハーベストのオペランド観察を行う。また、三重項ハーベストのモルフォロジー依存性を検討する予定である。密度行列を用いた理論計算も引き続き実施し、理論と実験の両面から三重項ハーベストの支配因子の解明にアプローチする。
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Causes of Carryover |
消耗品の購入経費が予想を下回ったため経費を削減することができた。繰越金は、次年度購入予定のテストフィクスチャの費用に充てる。
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