2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of Electron-rich Thiophene Oligomer-type Highly conducitive Materials: Dimensionality Expansion Strategy via Hydrogen-bond Formation
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21K05018
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤野 智子 東京大学, 物性研究所, 助教 (70463768)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オリゴマー / 有機伝導体 / 鎖伸長効果 / バンド構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,オリゴマー型有機伝導体によるの良導性材料の開発を目的とし,特に水素結合形成による伝導次元性拡張法の開発を目指すものである.有機エレクトロニクスデバイスの主流となっているポリマー材料は,その混合物性ゆえに構造が不明瞭であり,良導化・高機能化のための指針が確立されていない.そこでポリマーの基礎骨格を維持した単分子性オリゴマー材料が注目されている.中分子領域のオリゴマーは結晶構造解析により詳細な構造情報を入手可能であり,かつ単分子性ゆえにπ積層境界面の平滑化・膜均質化による高伝導化を可能としうるが,その難溶性・中間構造の不安定性などの合成的制約により未だ良導性オリゴマーの実現例はない.これまでに,エチレンジオキシチオフェン(EDOT)2量体の電荷移動塩の単結晶を合成し,その1次元積層カラム内で,金属・超伝導体に匹敵する強い分子間相互作用が見つかった.しかし,その伝導性は0.003 S/cm以下と高くなく,分子間相互作用を凌駕する強いオンサイトクーロン反発の存在するモット絶縁体状態の形成が示唆されていた.本研究では,このオリゴマー型伝導体材料を良導化するための戦略として,ドナーに水素結合性基を導入し,カラム間での分子間相互作用の獲得による高次元化法の開発を行う.本年度は,EDOT2量体の電子状態構造解析を理論・実験の両面から行い,その特性を明らかにするとともに,ドナー構造の多様化を行った.EDOT3量体電荷移動塩の新規開発によるオンサイトクーロン反発を弱めるための鎖長伸長効果を実験的に見出すとともに,水素結合性アニオンをカウンターアニオンとした電荷移動塩を新規に開発し,水素結合形成を含む構造制御因子の伝導性に与える効果を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
EDOT2量体をドナーとし,3種のカウンターアニオン(BF4-,ClO4-,PF6-)を用いた電荷移動塩単結晶を開発し,そのアニオンサイズに依存した伝導性変化を明らかにした.アニオンサイズが大きくなるほど,ドナー積層間距離・分子間距離がわずかに伸長し,伝導性が一桁ずつ低下した.オンサイトクーロン反発における遮蔽効果の弱まりが寄与しているものと考えられる.さらに,EDOT3量体のPF6-塩単結晶を新規合成し,2量体塩と3量体塩の比較から,伝導性への鎖伸長効果を調査した.2量体塩はドナーどうしが等価積層した一次元カラム構造を示したが,3量体塩はドナーがπダイマー化して積層した一次元カラム構造を示し,フェルミ準位付近にバンドギャップを有するバンド絶縁体状態を示した.平均ドナー積層間距離も2量体塩よりも若干伸長し,バンド幅がわずかに低下して伝導性には不利なバンド構造を示した.しかし,その伝導性は2量体塩の20倍向上しており,鎖伸長によるオンサイトクーロン反発の低減効果が支配的であることを明らかにした.これまで理論的に予測されてきた鎖伸長効果を実験的に初めて実証することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
ドナーの末端構造として水素結合性置換基の導入を行い,その電荷移動塩単結晶の伝導性を評価する.ドナー骨格自体もさらなる鎖伸長や,複数の単位構造からなる配列構造を導入することで多様化し,配列構造-積層様式-伝導性の相関研究を行う.末端構造やドナー分子の構造変化に伴う,次元性拡張や電子状態変化に基づいた伝導性変化を明らかにすることで,良導化のためのドナー分子設計指針を明確にする.こうした合成戦略は,単結晶構造解析可能な分子量領域であり,かつその豊富な構造制御因子をゆうするオリゴマーの特化した戦略と言える.来年度は,これまでに確立してきた単結晶構造を基にした第一原理計算によるバンド幅の見積もりに加え,オンサイトクーロン反発の理論的見積もる予定としており,伝導性発現における電子構造的理解をより深められると考えている
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Research Products
(30 results)