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2022 Fiscal Year Research-status Report

安定フェノキシルラジカルからなるアモルファス固体の軟質磁性に関する研究

Research Project

Project/Area Number 21K05019
Research InstitutionUniversity of Toyama

Principal Investigator

林 直人  富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (90281104)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 吉野 惇郎  富山大学, 学術研究部理学系, 助教 (70553353)
Project Period (FY) 2021-04-01 – 2024-03-31
Keywordsアモルファス固体 / フェノキシルラジカル / 2量化平衡 / 磁化率測定
Outline of Annual Research Achievements

スピン密度の増大を目指し、トリアリールフェノキシルラジカル-2量体系を用いて二つの手法を検討した。(1)では、アリール基上に安定ラジカル部位であるTEMPOL(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)部位を置換した新規分子の合成に概ね成功している。一方(2)では、従来のアモルファス固体とラジカル分子からなる結晶を固相摩砕することで、TEMPOLが最大5%含まれた分子性錯体(混合アモルファス)の調製に成功した。得られた混合アモルファスの磁化率測定を行ったところ、弱いながらもスピン間に磁気的相互作用がある可能性が示唆された。TEMPOLの比率が低い理由としては、TEMPOL分子とフェノキシルラジカル分子の分子構造が相当異なっているためであろうから、今後は両者の分子構造をより近づけることで、ラジカル分子の含有率がより高く、その結果強い分子間相互作用が期待できる混合アモルファスの調製を目指す。
これと平行して、種々の条件下でのトリアリールフェノキシル-2量体系のアモルファス形成共同を検討した。固化条件が変わるとアモルファス固体中のフェノキシル/2量体比(組成比)は変化したが、その下限は2:98であった。ただし、それらの粉末X線回折パターンや熱分解温度に概ね同じだった。さらに、アモルファス固体を前駆体フェノールの結晶と混合撹拌したところ、フェノキシル/2量体の組成比は2:98で変わらないまま、フェノールがアモルファス中に取り込まれた混合アモルファスが得られた。以上の実験結果は、フェノキシルと2量体が物質量比2:98で含まれるクラスターがアモルファス固体の基本構造になっていること、またフェノールやTEMPOLといったゲスト分子はクラスターに構造に影響を与えず、それらの間に取り込まれることを強く示唆している。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

スピン密度の増大を目指し、トリアリールフェノキシルラジカル-2量体系を用いて二つの手法を検討した。(1)では、アリール基上に安定ラジカル部位であるTEMPOL(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)部位を置換した新規分子の合成に概ね成功している。一方(2)では、従来のアモルファス固体とラジカル分子からなる結晶を固相摩砕することで、TEMPOLが最大5%含まれた分子性錯体(混合アモルファス)の調製に成功した。得られた混合アモルファスの磁化率測定を行ったところ、弱いながらもスピン間に磁気的相互作用がある可能性が示唆された。TEMPOLの比率が低い理由としては、TEMPOL分子とフェノキシルラジカル分子の分子構造が相当異なっているためであろうから、今後は両者の分子構造をより近づけることで、ラジカル分子の含有率がより高く、その結果強い分子間相互作用が期待できる混合アモルファスの調製を目指す。
これと平行して、種々の条件下でのトリアリールフェノキシル-2量体系のアモルファス形成共同を検討した。固化条件が変わるとアモルファス固体中のフェノキシル/2量体比(組成比)は変化したが、その下限は2:98であった。ただし、それらの粉末X線回折パターンや熱分解温度に概ね同じだった。さらに、アモルファス固体を前駆体フェノールの結晶と混合撹拌したところ、フェノキシル/2量体の組成比は2:98で変わらないまま、フェノールがアモルファス中に取り込まれた混合アモルファスが得られた。以上の実験結果は、フェノキシルと2量体が物質量比2:98で含まれるクラスターがアモルファス固体の基本構造になっていること、またフェノールやTEMPOLといったゲスト分子はクラスターに構造に影響を与えず、それらの間に取り込まれることを強く示唆している。

Strategy for Future Research Activity

軟質磁性発現のためには、固体中でスピン同士がある程度近接し、それらの間に強い磁気的相互作用が働いている必要がある。そのための条件として、固体が一定数以上のラジカル部位を含んでいる必要がある。このような固体の実現を目指し、前項(1)(2)の実験を行い、(2)の手法においてTEMPOL分子がある程度の比率で含まれたアモルファス固体の調製に成功した。ただしTEMPOL分子の比率は、いまだ十分ではないと考えている。TEMPOL分子の比率が低かった理由としては、TEMPOL分子とフェノキシルラジカル分子の分子構造が相当異なっていることによると考えている。実際、フェノキシルラジカルの前駆体であるフェノールをゲスト成分として場合は、2量体分子の3倍以上のフェノール分子が取り込まれるとする知見を得ている。このことに基づき、今後は分子構造がフェノキシルラジカルにより近い安定ラジカルをゲスト成分として、ラジカル分子の含有率が高く、その結果強い分子間相互作用が期待できる混合アモルファスの調製を検討する予定である。
また、トリアリールフェノキシル-2量体系の基礎的知見としては、前項で述べた組成比2:98のクラスターが鍵を握っていると考えているが、その実験的検証はまだ不十分である。今期は走査型顕微鏡などの装置を用いて、当該クラスターの直接検出を行うことを計画している。

Causes of Carryover

物品費については、学生の習熟度が増したためか合成実験の収率が想定したよりも高く、高価な遷移金属触媒の消費量が抑えられたことと、コロナ禍で学生のパフォーマンスが想定以上に低下したことの二つの理由により、残高が発生した。新年度が学生が代替わりしたため、想定どおりまたは想定した以上に実験がはかどり、前年度の余剰分と相殺されると見込んでいる。旅費は、コロナ禍の影響により、出張計画の変更を余儀なくされた。その他は、多くを測定機器の分担金として計上していたが、装置の故障により使用回数が大幅に減り、分担金額もまた減少したため。新年度は前年度測定できなかった試料の測定も行う計画であり、それによる支出を予定している。

  • Research Products

    (16 results)

All 2023 2022

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (14 results)

  • [Journal Article] Stereoselective Knoevenagel reaction between pyrimidine carbaldehyde bearing an adjacent aryl group and active cyano-containing methylene compounds2023

    • Author(s)
      Yoshikawa Takahiro、Hayashi Naoto、Yamada Akihiro、Yokota Masayuki
    • Journal Title

      Tetrahedron Letters

      Volume: 116 Pages: 154307~154307

    • DOI

      10.1016/j.tetlet.2022.154307

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Triarylboranes bearing a benzimidazole or quinoline ring attached to the boron atom: Synthesis, π-conjugation, and fluorescence2022

    • Author(s)
      Yoshino Junro、Kawaguchi Shusei、Takata Shinya、Hayashi Naoto
    • Journal Title

      Results in Chemistry

      Volume: 4 Pages: 100342~100342

    • DOI

      10.1016/j.rechem.2022.100342

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 異なる固化条件により調製したトリアリールフェノキシルとその二量体からなるアモルファス固体の多形2022

    • Author(s)
      平 りくか・吉野惇郎・林 直人・宮崎 章
    • Organizer
      第32回基礎有機化学討論会
  • [Presentation] NHCとピリジン部位からなる二座配位子を有するボロニウム錯体の固相光応答着色2022

    • Author(s)
      辻 弘昭・吉野惇郎・林 直人
    • Organizer
      第32回基礎有機化学討論会
  • [Presentation] 4-tert-ブチルフェニル基の置換基数による2,4,6-トリアリールフェノキシル誘導体の固化挙動の変化2022

    • Author(s)
      呂 信文・吉野 惇郎・林 直人
    • Organizer
      第19回ホスト-ゲスト超分子化学シンポジウム
  • [Presentation] 濃縮法と磨砕法を用いたトリアリールフェノキシル/2量体系のアモルファス 固化における置換基の影響2022

    • Author(s)
      呂 信文・吉野 惇郎・林 直人
    • Organizer
      日本化学会近畿支部 2022年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [Presentation] 異なる条件で調製したトリアリールフェノキシルからなるアモルファスの磁 化率と熱的挙動2022

    • Author(s)
      平 りくか・吉野 惇郎・林 直人
    • Organizer
      日本化学会近畿支部 2022年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [Presentation] アモルファス固化挙動の検討に向けた非対称トリアリールフェノールの合 成2022

    • Author(s)
      黒田 将暉・吉野 惇郎・林 直人
    • Organizer
      日本化学会近畿支部 2022年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [Presentation] 2,4,6-トリアリールフェノキシルとそのフェノール類縁体からなるアモル ファスの調製2022

    • Author(s)
      大嶋 京・吉野 惇郎・林 直人
    • Organizer
      日本化学会近畿支部 2022年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [Presentation] エステル置換基をもつフェノール三量体-アミン錯体における特異なフェ ノキシドC-O結合長2022

    • Author(s)
      大塚 紗樹・吉野 惇郎・林 直人
    • Organizer
      日本化学会近畿支部 2022年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [Presentation] 2,4,6-トリアリールフェノキシルからなるアモルファス固化へのTEMPOLの 導入2022

    • Author(s)
      山室 友梨華・吉野 惇郎・林 直人
    • Organizer
      日本化学会近畿支部 2022年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [Presentation] キノリン環を有するねじれ電子ドナーアクセプター構造トリアリールボランの合成と性質2022

    • Author(s)
      髙田新哉, 吉野惇郎, 林直人
    • Organizer
      日本化学会近畿支部 2022年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [Presentation] ビピリジン-ボロニウム錯体の固相光応答着色挙動の同形結晶間での比較2022

    • Author(s)
      木村南結, 水口萌音, 吉野惇郎, 林直人
    • Organizer
      日本化学会近畿支部 2022年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [Presentation] ビピリジン-ジ(2-アリールエチル)ボロニウム錯体の合成2022

    • Author(s)
      明野有紗, 吉野惇郎, 林直人
    • Organizer
      日本化学会近畿支部 2022年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [Presentation] NHCを配位子にもつボロニウム錯体の固相光応答着色挙動2022

    • Author(s)
      辻弘昭, 吉野惇郎, 林直人
    • Organizer
      日本化学会近畿支部 2022年度北陸地区講演会と研究発表会
  • [Presentation] 異なる外形の対アニオンをもつビピリジン-ボロニウム錯体の合成と固相光着色挙動2022

    • Author(s)
      新井亮哉, 吉野惇郎, 林直人
    • Organizer
      日本化学会近畿支部 2022年度北陸地区講演会と研究発表会

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Published: 2023-12-25  

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