2021 Fiscal Year Research-status Report
Synthesis and Properties of Antiaromatic s-Indacene Derivatives
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21K05021
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
戸部 義人 大阪大学, 産業科学研究所, 招へい教授 (60127264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
家 裕隆 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80362622)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 反芳香族化合物 / 有機電子材料 / s-インダセン / 電子状態 / 分子構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では新たな合成法に基づいて電子供与性あるいは電子求引性置換基をもつヘキサアリール置換s-インダセン誘導体を合成し、X線構造解析に基づく分子構造、酸化還元特性や分光学的性質を調査し、機能性物質としての利用の可能性を調べることを目的としている。 2021年度は、川瀬らの開発した5員環融着法を用いて、特定の位置に電子供与性あるいは電子求引性置換基をもつ1,2,3,5,6,7-ヘキサアリール置換s-インダセン誘導体の合成法の開拓を行った。その結果、計画通りに1,4-位、1,8-位、2,6-位に電子求引性の4-(トリフルオロメチル)フェニル基あるいは電子供与性の4-メトキシフェニル基が置換し、その他の4つの位置に電子的にフェニル基あるいはキシリル基が置換したC2h-、C2v-、D2-対称形のヘキサアリール置換s-インダセン誘導体を市販物から4段階で合成することに成功した。また、熱分析実験からこれらが電子材料への応用に耐えうる熱安定性を有することを確認した。 量子化学計算に基づく電子状態予測と分光学的および電気化学的計測に基づき、置換基の電子的性質と置換パターンによる分子軌道のエネルギー準位の変化のみならず、s-インダセンに特有の電子配置に起因する分子軌道の摂動が起こることを見出した。さらに、量子化学計算から分子構造のゆがみに対する置換基効果が予測された。この点を検証すべく、2種類の化合物に関してX-線構造解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
年度計画ではC2h-対称形のs-インダセン誘導体の合成法を確立する計画であったが、それ以外に次年度に計画していたC2v-およびD2-対称形の化合物の合成も達成した。また、計画には含まれていなかったが、量子化学計算に基づきs-インダセンに特有の電子配置に起因する分子軌道の摂動が起こる可能性を見出し、それを支持する実験的結果を得た。s-インダセンに特有の現象ではあるが、他に例のない分子軌道摂動の例を見出したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
置換パターンの異なるヘキサアリール-s-インダセンの基本的な合成法は確立できたので、さらに多くの誘導体を合成し、その電子状態の制御を行う。置換基効果による反芳香族化合物への構造ならびに電子状態に対する摂動の研究例はほとんどないため、これらに関して理論と実験に基づく検証を行う。 2021年度の研究から、一般にヘキサアリールインダセンの溶解度が低いため、この点を改良する必要があることが判明した。2022年度はキシリル基を導入することでこの問題を解決したが、有機トランジスター用半導体への応用に向けて長鎖アルキル基の導入を行う。同時に、より強力な電子求引性基をより多く導入して非占軌道準位を低下させ、電子とホールの両方の移動が可能な両性半導体の合成を目指す。
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Research Products
(3 results)