2023 Fiscal Year Annual Research Report
Synthesis and Properties of Antiaromatic s-Indacene Derivatives
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21K05021
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
戸部 義人 大阪大学, 産業科学研究所, 招へい教授 (60127264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
家 裕隆 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80362622)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 反芳香族化合物 / 有機電子材料 / s-インダセン / 電子状態 / 分子構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、ヘキサアリール置換s-インダセンの特定の位置に複数の電子供与性あるいは電子求引性置換基をより高度に導入する方法の開発を展開した。すなわち、C2h-、C2v-、D2-対称の置換パターンをもち、4個の電子求引性基あるいは電子供与性基が置換し、残りの位置には電子的な中性基が置換した化合物や、残りの位置にドナー基あるいはアクセプター基が置換した誘導体を合成した。それらの分光学的および電気化学的計測を行い、置換基の電子的性質と置換パターンによるフロンティア分子軌道のエネルギー準位の変化の影響を調査した。さらに、量子化学計算からs-インダセンの構造に関する新たな予測が導かれた。すなわち、通常、反芳香族分子は疑Jahn-Teller効果により低対称の構造をとるのに対し、s-インダセンの特定の位置にドナー基とアクセプター基をD2-対称に配置することにより、高対称のD2h構造をとる可能性が示唆された。高対称構造の反芳香族化合物はこれまで例がなく、非常に興味深い予測である。そのほか、単分子伝導度測定に用いる誘導体やs-インダセンを含むポリマーの原料になるチオフェン置換s-インダセンも合成し、さらなるs-インダセンの研究の礎を築いた。 研究期間全体を通じ、当初の目標であった所望の性質のアリール置換基を所望の位置に導入する方法を開発した。非交互炭化水素に特徴的なフロンティア軌道の分布に基づき、置換基の種類と位置によりそれらの準位の相対位置が制御できることを量子化学計算と分光学的、電気化学的測定に基づいて明らかにした。また、有機半導体への応用の可能性も示した。さらにエネルギー準位の制御により、分子構造の対称性も制御できる可能性も明らかになり、当初の予想を上回る成果が得られた。
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