2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of rigid macrocycles for easy vitrification
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21K05029
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
所 雄一郎 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 助教 (80709692)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 有機ケイ素 / ガラス / マクロサイクル / 有機結晶 / 蛍光 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジシリルアントラセンの片面をマクロサイクル構造により被覆した発光性分子を系統的に合成し,被覆構造が結晶化やガラス化に及ぼす影響を明らかにすることを目指している。今年度はケイ素間を長さの異なるジフェニルオキシアルカン型の鎖で架橋した分子を設計した。大環状構造の構築ははビス(トリエトキシシリル)アントラセンとジリチオ化した架橋鎖ユニットの分子間環化反応により行い,ケイ素上のエトキシ基は水素化リチウムアルミニウムによりヒドリドに置き換えた。単結晶X線構造解析により,それらの架橋鎖は全てジョイントクリップに似た配座であることが分かった。架橋鎖が短い場合にはクリップの形がアントラセンの側面の形状に適合して比較的対称性の高いダイマー構造を形成し,ダイマー間でアントラセンの面どうしが接近することが分かった。このタイプの結晶は緑色のエキシマー発光を示した。一方,架橋鎖が長い場合にはクリップ構造の内側と外側が接近して分子が積み重なり,アントラセンどうしは面と端で接近する様子が見られた。こちらのタイプの結晶は希薄溶液に似た青色のモノマー発光を示した。架橋鎖の長さが中程度の分子の結晶では,クリップどうしが緩くかみ合うように分子が接近していた。アントラセン面間の接近は無かったため,結晶は青色のモノマー発光を示した。しかしながら,このタイプの結晶をすりつぶすことにより,発光が青色から緑色に変化し,充填構造が変化したことを示す結果が得られた。以上のように被覆に用いる架橋鎖の長さを変化させることにより結晶充填構造と発光色が大きく変化することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究により,架橋鎖のわずかな骨格の差異が結晶充填構造を決定する因子の一つであることが明らかになった。特にアントラセンの形に適合せず,架橋鎖間でのスタッキングもできない中途半端な長さの架橋鎖を有する分子は充填構造が変化しやすいことを見出した。この結果は,分子構造のパラメータを調節し,分子間相互作用の競合が起こりやすい構造にすれば,結晶の安定性が低下することを示唆している。したがって,当初の計画通りに分子間相互作用の競合を突き詰めていくことにより,容易にガラス化する低分子群の創出が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究からガラス化を容易にするためには,(1)架橋鎖間のスタッキングを抑制すること,および(2)対称性の高いダイマー形成を抑制すること,の2点が重要であると考えられる。この2点を達成するためにキラリティを有する架橋鎖を導入した剛直マクロサイクルの合成を行う。光学活性体と,ラセミ体あるいはアキラルな類縁体について結晶構造や熱物性を比較し,キラリティが結晶化およびガラス化に及ぼす影響を調査する。また,想定される分子間相互作用のモデリングを行い,量子化学計算によりそのエネルギーを見積もることで,凝集時に局所的な安定化が起こらないような分子を設計する。
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Causes of Carryover |
合成実験が計画以上に順調に進み消耗品費を節約できたこと,および新型コロナウィルスの影響で計画していた出張が中止になったことにより次年度使用額が生じた。この助成金は合成実験のさらなる効率化のための実験器具や高額な合成中間体の購入に使用する予定である。
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