2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of molecular transformation based on generation of higher ordered dipolar species utilizing 1,3-dipoles
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21K05050
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
宇梶 裕 金沢大学, 物質化学系, 教授 (80193853)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 1,3-双極子 / カルベン型化学種 / アゾメチンイミン / ニトロン / ジアゾ化合物 / 硫黄イリド / トリメチルシリルジアゾメタン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,1,3-双極子を原料として高次双極性化学種を創生し,その高次化学種を活用する革新的分子変換法を開発することを目的とする。1,3-双極子による協奏的[3+2]付加環化反応は,有用で信頼性の高い複素5員環合成法であり,高い原子効率のために医薬品等の高機能性物質合成に広く利用されるが,複素5員環合成以外への適用には限界があった。本研究では,1,3-双極子単独ではなく,カルベンおよびカルベン型化学種という異なる機能をもつ化学種との融合による協働・重奏化,の基本コンセプトのもと,1,4-双極子を始めとした高次双極性化学種を創生すること,創生した反応活性な高次双極性化学種を活用する多様な分子変換プロセスを開発することを究極の目標としている。 1,3-双極子とイソシアニド,硫黄イリドについては,それぞれ付加型,挿入型シナジーを実現している。さらに,窒素イリドとみなすこともできるジアゾ化合物においても,協奏化可能という知見を得ている。即ち,イソキノリン骨格を有するN’-アシルアゾメチンイミンとの反応において,ジアゾ酢酸エチルとジアゾメタンを使い分けると反応形式が変わり,付加型反応と環拡大反応が進行しすることを明らかにしている。しかし,ジアゾメタンは毒性が高く,爆発性も有することから,より安全な手法の開発が求められていた。種々検討の結果,毒性,爆発性が抑制されたトリメチルシリルジアゾメタンを用いると,同様の環拡大反応が進行することが明らかとなった。特に共溶媒としてメタノールを添加すると穏やかに反応が進行することを見出した。さらに基質であるN’-アシルアゾメチンイミンを3回程度に分割して加えることにより,収率向上を実現することができた。一方,1,5-双極子への展開を目指し,1,5-双極子発生を示唆する知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの検討により,1,3-双極子とカルベンおよびカルベン型化学種という異なる機能をもつ化学種との融合による協働・重奏化,の基本コンセプトのもと,イソシアニド,硫黄イリドに加え,ジアゾ化合物においても付加型,挿入型シナジーを実現することができた。硫黄イリドにおいては,ニトロンC-H結合への形式的挿入反応を実現することができ,直接合成が難しいC-置換型ニトロンを反応系内で発生させ,引き続く1,3-双極子付加環化反応が可能である,という実例を示すことができた。ジアゾ化合物については,毒性や安全性に考慮した反応開発も重要なポイントであるが,より安全なトリメチルシリルジアゾメタンの活用に成功し,ベンズアゼピン化合物の特徴ある合成法を開発することができた。これまでは,1,3-双極子+カルベン型化学種=1,4-双極子相当の分子変換であった。令和4年度においては,1,3-双極子+カルベン型化学種+カルベン型化学種=1,5-双極子相当の実現を検討した結果,1,3-双極子としてニトリルオキシド,カルベン型化学種として硫黄イリドを選ぶと,1,5-双極子発生を示唆する結果を得ることができた。一方,1,3-双極子自身をいわゆる”1,2-双極子”+カルベン型化学種により調製可能ならば,双極子自在制御への道を開くことが可能である。”1,2-双極子”の候補であるアゾ化合物に特に注目して複核キラル反応場での挙動を確認する検討も行い,立体化学の制御が可能であるという知見を得た。また,光反応場での立体化学の制御の可能性についても検討を行い,新たな興味深い知見を得ることができ,研究を順調に進捗させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
イソキノリン骨格を有するN’-アシルアゾメチンイミンとジアゾ化合物と硫黄イリド,ジアゾメタンなどとの反応により,カルベンが1,3-双極子に形式的に“挿入”したベンズアゼピン環が得られるというユニークな反応を開発している。この反応を不斉合成へ展開すれば,光学活性ベンズアゼピンの有効な合成法となり得ることから,複核キラル反応場における不斉誘起の実現を検討する予定である。これまでの検討では,一般的にニトロンへの硫黄イリドの付加によって生成すると考えられるアジリジンN-オキシドへの硫黄イリドの二度目の付加は進行しない。そこでより活性と考えられるアジリンN-オキシドの発生を目指し,三重結合型1,3-双極子との反応を検討する。例えば,ニトリルオキシドへの硫黄イリドの付加反応によって硫黄イリドの二重付加の実現を図る。予備実験で,アジリンN-オキシドに二度目の硫黄イリド付加を経由したと考えられるC-ビニルオキシム生成物が得られている。今年度は,二度目の付加中間体からの脱プロトン化を防ぐために,ルイス酸による制御により分子間捕捉を目指す予定である。一方,双極子化合物の自在調製法の確立を目指すこととし,これまでとは逆に,1,3-双極子=”1,2-双極子”+カルベン型化学種を確立したい。”1,2-双極子”としては,ニトロソ化合物,アゾ化合物などが候補である。予備的検討では,ニトロソ化合物+硫黄イリド,により1,3-双極子が発生し,酒石酸誘導体を活用した複核キラル反応場にて,光学活性イソオキサソリジンが得られることを確認している。1,3-双極子生成段階,付加環化段階での金属による活性化効果の有無を精査する予定である。また,アゾ化合物を活用して,アゾメチンイミンの自在発生法の確立も目指す予定である。
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Research Products
(7 results)