2022 Fiscal Year Research-status Report
コバルト/光レドックス協働触媒が拓くσ結合活性化を伴う環化異性化反応
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21K05051
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安井 猛 名古屋大学, 創薬科学研究科, 助教 (70812783)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コバルト触媒 / 光レドックス触媒 / 環化異性化反応 / σ結合活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、昨年度に引き続き、低原子価コバルト触媒の不安定性に起因する従来の触媒システムの脆弱性を克服するため、コバルト触媒と光酸化還元触媒の協働触媒システムを活用する環化異性化反応の開発を中心に行った。本年度は、新たに不活性な炭素-水素結合の活性化を伴う新奇環化異性化反応を見出すことができた。従来の反応と異なり、本反応は活性金属中心から遠隔位の炭素-水素結合を選択的に切断し、結合を組み替えることができる。反応の前後で分子の組成が変化しないため、原子効率100%の反応であり、シンプルな鎖状ジイン誘導体から複雑な環構造を一挙に構築することができる。本反応により得られる生成物は、軸不斉を有する環状アルケンであり、その不斉合成についても検討した。その結果、キラルホスフィン配位子を用いることで、中程度の選択性ではあるものの、エナンチオ選択的に生成物を得ることに成功した。本反応は2価コバルトと金属還元剤を用いる従来の反応条件下では生成物は低収率でしか得られないことも明らかとなった。また、実験化学的手法に加え、計算化学的手法を用いて反応機構についても検証し、σ結合の活性化がどのように達成されるのかについて妥当なメカニズムを明らかにすることができた。一方、コバルトではないが、遷移金属触媒を用いる炭素-炭素二重結合を選択的に切断する新規環化異性化反応や炭素-水素結合活性化を伴うヘテロ環の構築反応も見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた不斉 [2+2+2]環化付加反応や炭素-酸素σ結合活性化を鍵とする新規反応の開発に加え、予想外にも、遠隔位炭素-水素結合の活性化を伴う新奇環化異性化反応を見出すことができた。また、実験化学に加えて計算化学的手法を駆使することにより、反応機構について新たな知見を得ることができた。また、金属種は異なるものの、これまでに例のない炭素-炭素結合の活性化を伴う新奇環化反応も見出すことができており、想定以上の成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに見出した遠隔位炭素-水素結合活性化を伴う新奇環化反応では、アルキンとアルケンを含むエンジインから芳香環を含むキラルなアルケン化合物が得られる。すなわち、不斉反応への展開が可能と考えられる。そこで、不斉配位子や基質を適切にデザインするなどの検討により、高エナンチオ選択的な遠隔位炭素-水素結合活性化を伴う新奇環化反応の開発を実施する。また、これまでに得られた知見を活かし、炭素-水素結合や炭素-炭素結合などのσ結合活性化を含む新たな環化異性化反応の開発を行う。具体的には、分子内反応に限らず、分子間反応への応用を検討する。計算化学を用いる反応機構解析も順調に進捗しており、得られた結果を参考に新たな反応の開発につなげる。また、不斉反応においては、遷移状態モデルを導出し、不斉配位子の効率的な開発につなげる。
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Causes of Carryover |
前年度に引き続き、σ結合の活性化を鍵とする新規環化反応の開発を実施するが、より難易度の高い反応開発を実施する。また、現在中程度の選択性にとどまっている不斉反応について、不斉配位子の検討を行うため、より多くの試薬や消耗品の購入を予定している。これまでに得られた成果を論文として発表するための校閲費や化合物データ取得のための測定機器利用費も必要となる。以上の事から、次年度の使用額が増えることが予想されたため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(17 results)