2022 Fiscal Year Research-status Report
多元触媒系脱水型アリル化による多点立体選択包括型アセト酢酸エステル合成
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21K05052
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
田中 慎二 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (00529034)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 不斉アリル化 / βケトエステル / ジアステレオ選択的 / パンクラチスタチン / 脱水型反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
βケトエステル類のα位アリル化反応は、ケトン、エステル、アルケンを分子内をもつ有機合成上有用な生成物を与える。α位に生じる不斉点を制御できれば、様々な光学活性化合物への展開が期待される。しかし、無置換のβケトエステルを基質とした場合、α位が第三級となり酸、塩基条件性条件で速やかに立体反転が起こるため、これまで報告例がなかった。我々は独自に開発したルテニウム触媒が、触媒量のブレンステッド酸共存下、1,3-ジカルボニル化合物と、アリルアルコールとを脱水的にカップリングする手法に着目し、その実現を目指した。 βケトエステルとルイス酸金属塩を反応させると、金属エノラートと対応する共役酸を放出する。これを、上記ルテニウムに対する共触媒として活用すれば、余計な酸を添加する必要がなく、かつ反応速度が調和すれば反応系を中性に保持できると考えられる。この指針のもと触媒探索をを行った結果、βケトエステルの不斉アルキル化に実績のあるカチオン性BINAPパラジウム触媒の有効性を明らかとした。このパラジウムおよびルテニウム触媒を組み合わせると、無置換のβケトエステルに対して、高いエナンチオ、かつジアステレオ選択性で対応するカップリング体を得ることができた。パラジウムは、βケトエステル骨格のα位の立体を、ルテニウムは、アリル骨格のアリル位の立体をそれぞれ制御するため、両触媒の立体を適宜組み合わせることによって、すべてのジアステレオマーを任意に合成できることが分かった。 βケトエステルのカルボニル基を還元すると、新しく不斉炭素が発生し、三連続不斉炭素をもつ化合物となる。ジアステレオ選択的なカルボニル還元反応を施すことにより、8つのすべての立体異性体の合成に成功した。本手法を活用して、パンクラチスタチンの形式合成をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた目標である、二元系触媒を確立したことに加え、三連続不斉炭素中心の構築にも成功した。生物活性物質の合成にも展開し、計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、基質適用性の拡充を中心に進める。とくに、βケトエステル骨格の範囲拡大を中心に進める。金属エノラートを形成する基質を中心に、二元系触媒を活用した検討をさらに進める。また、生物活性物質を中心とした有用物質合成を行う。ピペリジンアルカロイドやスフィンゴイドなど多点不斉中心をもつ化合物合成に本手法を勝祥したい。機構解明研究も進める計画である。
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Causes of Carryover |
学会発表の費用を計上したが、今年度は見合わせたため。 次年度以降に実施したい。
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